Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /12 小さなラガーマン




――…助けて…!遼ちゃん……!!


 耳の奥にその響きを聞いたような気がして、遼太郎は弾かれたように立ち上った。
 キョロキョロと辺りを見回しながら、店の外にまで飛び出した。

 遼太郎のその不自然な動きに、一緒にいた樫原や佐山は目を丸くしている。
 同じくコーヒーショップのテーブルに同席していた彩恵も、驚いて遼太郎を目で追った。


 遼太郎は表に出て、往来を行き交う人の波に目を走らせたが、そこに見知った人の顔はなく、一抹の不安を残して息を吐いた。


――…あんな風に俺を呼ぶのは、先生だけだ…。こんなところに、先生がいるはずないじゃないか……。


 そうやって自分に言い聞かせてみたが、「助けて」という響きに胸が騒ぐ。
 もしかすると、今どこかでみのりが窮地に立っていて、助けを求めているのかもしれない…。

 そう思うと、焦燥感で居ても立ってもいられなくなる。でも、今の自分には、それを確かめることさえできない。


 切なさが喉元にせり上がってきて、遼太郎はそれを抑え込むように拳を握り、歯を食いしばった。


 そんな風に苦悩を漂わせる遼太郎の表情を、店の外まで追いかけて出てきた彩恵が、心配そうに見守る。
 自分といる時も、遼太郎が幾度となくこんな表情を見せることに、彩恵は気づいていた。


「…狩野くん?どうしたの?」


 思い切って、彩恵は遼太郎に声をかける。
 我に返った遼太郎は、彩恵に向かって笑顔を作り、首を横に振った。


「いや、ちょっと。知り合いに呼ばれたような気がして。」

「知り合いって?誰?」


 彩恵が遼太郎の側までやって来て、シャツの腕のところを引っぱった。


「うん。高校の時の知り合いだから、茂森さんは知らない人だよ。」

「その人って、男の人?女の人?」


 突っ込んだ質問をされて、詮索され始めたので、遼太郎は眉を寄せて困り顔をした。





  • しおりをはさむ
  • 3265
  • 5140
/ 657ページ
このページを編集する