Rhapsody in Love ~幸せの在処~



 もちろん本当のことどころか、女の人だというだけで、彩恵を刺激してしまうことは分かっている。
 彩恵は、とても遼太郎のことを好きでいてくれているらしく、何気ない遼太郎の視線の先にもヤキモチを焼いた。


「おい、遼太郎!上着。」


 佐山から突然声をかけられて、放り投げられて宙を舞っていたモッズコートを受け取る。

 他の皆も店から出てきて、彩恵と二人きりではなくなったことに、遼太郎はホッと胸をなで下ろした。


「今日はもうお開きだぜ。猛雄はバイトがあるし、俺も練習があるし。」


 この日は、午後からの講義が急きょ休講になった。それで、クラスの仲のいい者同士ボーリングに行こうという話になり、そのボーリングの後、コーヒーショップで一息ついていたというわけだ。


 佐山の言葉に、遼太郎よりもその場にいた他の女の子の方が反応する。


「えっ?!樫原くん、何のバイトしてるの?」

「えへへ…あのね。家庭教師♡中学生の男の子なんだけど、すっごくカワイイんだぁ~。」


 その樫原の受け答えを聞いて、遼太郎は久々に虫唾(むしず)が走るのを覚えた。
 すると、佐山も同じように感じたらしく、佐山は樫原の背後からその首に腕を回して、締めるふりをする。


「猛雄!お前、そんなこと言うから、ホモだって思われんだよ!!気持ちわりーから、やめろって言ってんだろ!!」

「いやーん。やめて~、晋ちゃん~。」

と、いつもと同じようにじゃれ合う佐山と樫原を見て、一同に笑いが起こった。

 それから三々五々、皆は自分のこれからの目的の場所へと散っていく。


 彩恵は様子を窺うように、遼太郎を見上げる。


「駅まで送っていくよ。」


 遼太郎も、“彼氏”としての役割をちゃんと心得ていた。
 二人は並んで、最寄りの駅までの道を歩きはじめる。


――お似合いの二人……


 クラスの仲間内で、最初にカップルとなった遼太郎と彩恵は、皆からそう言われていた。




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