Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /13 誠意と愛情





「……ウソつき!!」


 鋭い口調と同じ目つきで、彩恵が遼太郎を見すえた。

 思ってもみなかった彩恵の反応に、遼太郎の方も目を丸くする。自分の言動の何が気に入らないのか分からず、ただ黙って彩恵を見つめ返した。


 穏やかな冬の陽射しで陽だまりになっているこの場所は、大学の学生たちが待ち合わせなどに使うピロティ。カフェのようにテーブルと椅子が並べられ、昼休みは多くの学生たちが行き交っている。

 その片隅で、テーブルを挟んで向かい合って座る二人の空気は、周囲の穏やかさとは対照的に、彩恵のこの一言で緊迫したものになった。


「……今度ゆっくりできるときに、私のアパートに来てくれるって言ってたのに。用事を入れちゃうなんて…!」


 要するに彩恵は、日曜日に遼太郎がラグビースクールのコーチに行かねばならなくなったのが、気に入らないらしい。


「土曜日だったら、空いてるんだけど…。」


 彩恵のアパートに行くのは、あまり気乗りしなかったが、この様子では一度は行かなければ収まらない雰囲気だ。


「土曜日は、ノリちゃんと『秘書検定講座』のスクールの説明会に行くことになってるの。」


 休みの日に用事を入れているのは彩恵も同じなのに、一方的に遼太郎を責める彩恵の思考を、遼太郎は懸命に理解しようとする…。

 きっと、彩恵は想定外のことに戸惑っているのだろう――。
 遼太郎は、そう思うことにした。

 しかし、遼太郎がなだめる言葉をかける前に、彩恵から畳みかけるように、遼太郎への不満が飛び出してくる。


「……その、ラグビーのコーチ、断れないの?狩野くんが自分でプレーするわけじゃないんだから、どうでもいいじゃない。」


 今度は遼太郎の方が、信じられないものを見るように彩恵を見つめた。
 こんなことを言いだすなんて、遼太郎の感覚では本当に考えられない。


――それはいくらなんでもワガママだ…。


 そう思いながら、モヤモヤと立ち込めてくる感情をグッと心の奥底に押し込める。
 深く一つ呼吸をしてから、遼太郎は口を開いた。






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