Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /14 弟




麗らかな陽射しがあふれる放課後、みのりはふと渡り廊下に佇んだ。
窓から眼下に咲き誇る桜に目を奪われて。

窓を開けて、桜の梢を渡った柔らかい風を、胸に吸い込む。


みのりの心はあの時のまま、何も変わっていないのに、季節はまた巡り、また新しい春が来て、取り巻く環境だけは変化していく。

今年は3年生の担任を任された。これから怒涛のような1年が待っているけれども、今のうちは、まだこうやって桜を愛でることもできる。


美しいものを見て心が震えると、キリキリと胸を締め付ける痛みも伴ってくる。

遼太郎を想う心は、同じように純粋なものだから、こんな澄んだ感動とはいつも隣り合わせだ。
遼太郎への想いは、花のように色あせることも、散ってしまうこともなく、ますます色濃く深くなっていく。

叶えられない想いは切ない痛みをともなうけれども、その痛みを、みのりはいつもそっと胸にしまい込む。

この痛みこそ、遼太郎がみのりの中で生き続けている証拠だから。

遼太郎がこの胸の中に存在してくれていなければ、生きていけない――。

それに気が付いたみのりは、切ない痛みとも少しだけ上手く付き合っていけるようになっていた。



穏やかな空気の中に、一滴のざわめきが落とされる。

まだ新生活に不慣れで初々しい1年生たちを押し退けて、一人の男子が廊下を一心不乱に走ってくる。


「みのりちゃん!」


突然、女の子に大声で呼ばれて、みのりは声のした方を確かめた。
思った通り二俣の妹の愛が、廊下の向こう側から、血相を変えてこちらへと向かっていた。




0
  • しおりをはさむ
  • 3265
  • 5123
/ 657ページ
このページを編集する