Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /16 愛しい想いと体の関係 Ⅱ




「時間もちょうどよくなりました。どこかに食事に行きましょう。」


 ガラス越しの街にネオンが灯り始めたのを見て、遼太郎が席を立つ。

 それは、初めから約束していたことだった。


「……うん。」


 道子も小さく返事をして、立ち上がる。


 すると遼太郎は手を差し出し、話の間ずっと道子の手に握りしめられていた空の紙コップを受け取ると、ごみ箱にそれを捨てに行った。



 夜の街を歩く時には、先ほどみたいに腕を引っぱってくれることもなかったし、手を繋いだり、ましてや抱き締めたり…、そんなことはしてくれなかったけれども、遼太郎はずっと道子に寄り添って、きちんと「彼女」として大事に扱ってくれた。


 それは、この日のデートに限らず、日常の大学のキャンパスで一緒にいる時でも。


 何でも穏やかな表情で聴いてくれる遼太郎には、道子もつっぱったことは言えなくなり、心の内を全て隠さずに話せるようになった。

 すると、遼太郎は何も指摘したり意見を言ったりもしないのに、道子自身、自分の考えの間違いや心の愚かさが自ずと見えてくるようになる。


 …裸で抱き合わなくても…、他の方法を考えなくても、ただ遼太郎と一緒にいるだけで…、道子の心は癒されていく。
 きれいな水で洗い清められるように、自分の心が澄んでいくのが分かった。



――このままずっと…、狩野くんの側にいたい…。



 遼太郎のような男に、心から想ってもらえたら…、道子はそう思わずにはいられなくなった。


 だけど、遼太郎には、何があっても忘れることのできない、心から愛している人がいる。
 その揺らぐことのない真理に裏打ちされているからこそ、あの時の遼太郎の言葉には強さがあった。




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