Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /19 さまよう心




――…また、逃げてしまった……。


 ほとんど眠らずに朝を迎え、カーテンを開けて、みのりはため息を吐いた。


 これまで、みのりは何度も逃げ続けてきた。
 別れを決めた後の石原からも、夏休みに学校にやってきた遼太郎からも…。

 自分にかけられる真剣な想いと対峙するのが、怖くて怖くて…。


 そして、昨夜は蓮見からも逃げ帰ってきた。
 結局自分は、真剣な想いときちんと向き合えない“卑怯な女”なのだ。



 タクシーに乗ってアパートに帰り着いた時は洋服を着てたので、途中で浴衣を返しに寄ったとは思うのだが…、あれからのことはよく覚えていない。
 それほど混乱して、動転していたということだ。


 逃げても……、この心にわだかまることの解決にはならないと、みのり自身よく解っている。
 昨日だって、蓮見にきちんと断るつもりで会っていたのだから、逃げたりせずに「待っていても無駄だ」と断言すべきだったのだ。


 でも、あの蓮見の眼差しの深さ、信念に裏付けられた言葉の力強さを思い出すと…、体が震える。

 抱きしめられたり、キスされたりしていたわけではないのに、静かな物言いの中から波動のように伝わってくる蓮見の熱情に、全身が締め上げられて、もう窒息してしまいそうだった。




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