Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /23 遼太郎のアパート





 ホテルの部屋に入って、みのりは無意識に携帯電話を確かめた。
 ――すると、遼太郎からの着信が五件ほど表示されている。雑踏の中、バッグに入れられていたためか、その電話の着信音は全くみのりの耳に届いていなかった。

 画面に表示されている『遼ちゃん』という文字を見た瞬間、みのりの中に遼太郎への想いが込み上げてくる。
 また涙が零れて落ちて、みのりは両手で顔を覆ってベッドへ座り込んだ。目を閉じ唇を噛んで、切なく苦しい感情の波が通り過ぎて行ってくれるのを待つ。


 遼太郎は、何を思って電話をかけてきたのだろう……。
 嫌いになったり、憎み合って別れたわけではない。遼太郎にもまだ想いが残っているのかもしれない。

 もし今、遼太郎へと折り返しの連絡をしたならば、遼太郎はここまで駆け付けてきてくれるかもしれない。そして、二人きりになれるこの空間の中で、離れ離れになっていた時間など忘れて、抱きしめあってキスをして……。


 みのりは顔を上げて、ベッドサイドの棚の上に携帯電話があることを確かめた。
 衝動のままに腕を伸ばそうとした瞬間に、みのりの理性がそれを食い止めた。


 遼太郎に陽菜を裏切らせてはならない。遼太郎の側にいて、あんなに楽しそうに笑っている陽菜を、悲しませてはならない。
 今日は少し不機嫌そうだった遼太郎も、きっと自分という〝邪魔者〟がいなければ、いつもは陽菜と楽しく過ごしているのだろう。


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