Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /4 練習試合

 みのりをアパートまで送りとどけた際、遼太郎はみのりが部屋へと誘ってくれるという、淡い期待をした。
 しかし、みのりはそんな素振りは見せなかったので、落胆しつつ、帰らざるを得なかった。

――これで良かったのかもしれない…。

 遼太郎はそう思うことにした。
 遊園地でみのりを抱きしめていたとき、あそこが人の大勢いる遊園地でなかったら、きっとキス以上の行為に及んでいたと、思い返す。

 あの熱烈なキスの余韻が残る今、アパートという密室で、みのりと二人きりになったならば、自分は自分の中に巣食う欲望を制御出来なくなるだろう。
 みのりの意思など関係なく、みのりをベッドへ押し倒して、全てを求めてしまうだろう。

 遼太郎は自分の中の欲望を押しとどめるのに必死になったが、心も体も蕩けてしまいそうな甘いキスの感覚は、遼太郎の体に染み付き、四六時中意識の大半を占拠した。
 そして、気が付くと、妄想はキスのその向こうの行為へと及んでいる。

 辛うじて考えずにすむのは、試合に出るため、ラグビーの練習をしている時だけだった。
 しかし、第2グラウンドを離れた瞬間に、遼太郎の思考は一気にみのりで満たされる。特に夜、布団の中で暗闇に包まれると、みのりに触れることが頭から離れてくれない。

 自分の中に存在するみのりを抱きたいという願望を、遼太郎はもう否定できなかった。



「遼ちゃん、東京にはいつ行く?」

 部活の練習が終わって、片づけをしている時に、二俣が不意に尋ねてきた。

 例によって、みのりのことが立ち込めていた遼太郎の頭の中に、新しい風が吹き込んできた。
 思考からほとんど排除されていた東京での新生活のことを、いきなり目の前にぶら下げられた気がした。

「うん。3月の終わりの週末に、母さんと一緒に行くことにしてるよ。アパートとかも、姉ちゃんが探してくれてるから、あんまり急がなくてもいいんだ。」

「そうか。じゃ、ぎりぎりまでみのりちゃんの側にいられるってわけだな。」

 相変わらず心の中を見透したような二俣の物言いに、遼太郎は肩をすくめた。


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