Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /31 繋がるもの



 暗く垂れこめた灰色の雲から雨が落ち始め、大学のキャンパスを歩いていた遼太郎は、額に手をかざしながらゼミ室のある棟に駆け込んだ。少し荒くなった息を落ち着けるように、湿っぽい校舎の中の階段を、一歩ずつ踏みしめてゼミ室へと向かう。

 ゼミ室へ行ってみると、珍しく誰もいなかった。雨のためか暗い室内は暗く、そこを照らすために照明のスイッチを入れてみても、電灯は点灯してくれなかった。


「……あれ?」


 遼太郎がつぶやき、何度かパチパチとスイッチを切り替えてみても変化はない。しょうがないので、ドアと反対側の明るい窓辺へと行って、そこに置かれてある長机にリュックを置いた。


「止みそうに……ないな。どうやって帰ろう……?」


 窓越しに雨が落ちてくる空を見上げて、独りごとを言う。自転車が使えないとなると、大学内のコンビニでビニール傘でも買うしかない。

 遼太郎は、リュックの中からペンケースとコピーをした論文の束を取り出し、そこに設置されている椅子に腰かけると勉強を始めた。論文を読み、大事だと思った場所に蛍光ペンや付箋でチェックしていく。
 雨の音と、遼太郎がペンを走らせる音だけが響き渡るゼミ室。

 遼太郎が論文に入り込んで、作業に没頭し始めたときのことだった。ゼミ室のドアが開き、誰かが入ってきた。けれども、遼太郎は集中していて、それに気がつかない。
 その人物は無言のまま、遼太郎の背後まで歩み寄る……。


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