Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /7 新生活




 みのりと澄子が、みのりのアパートへと帰り着いたのは、日付が変わって午前2時ごろだった。

 離任する澄子は、花束やお餞別などの大荷物を抱えて、居間へとへたり込んだ。みのりは帰ってくるなり、お風呂に向かい、入るための準備をしている。

「ほら、澄ちゃん。座りこんじゃうと、動くのがしんどくなるよ。さあ、お風呂、先に入って。お酒飲んでるから、シャワーだけにしようね。」

 澄子がシャワーを浴びている間、みのりは簡単に澄子の荷物の整理をして、甲斐甲斐しく布団の準備をした。そして、送別会用の少し改まった洋服を脱いで、楽な服に着替える。
 何かしていないと、今にも心の堰が切れて、その中に滅茶苦茶に突っ込まれている様々な感情が暴れ出してきそうだった。

「ああ、さっぱりした。お先に、ありがとね~。」

シャワーを浴びて出てきた澄子は、もうかなり眠そうだ。

「澄ちゃん、化粧品、自由に使ってね。それと、もう先に寝ててもいいからね。」

 みのりはそう言いながら、澄子と入れ替わりでお風呂に向かった。
 先ほど着たばかりの部屋着を脱いで、濡れた浴室に入り、シャワーの蛇口をひねる。勢いよく出始めた心地よいお湯の下に体を置いた時、正面の鏡に映る自分の姿が目に入ってきた。

 胸元に一片の花びらが落ちているような赤い印――。

 それが遼太郎に付けられたものだと判るまでに、時間はかからなかった。
 遼太郎の唇の感覚が、みのりの肌の上に甦ってくる。力強い抱擁と深いキスは、遼太郎がみのりの全てを、心の底から求めていた証だ。



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