鈍色の空【完】

第6章






























杏里は泣いていた。






幸せの絶頂にいる今日の主役を、その親友である私が泣かせてしまった。


もう目を真っ赤にさせてしまうほどに。






「・・・・ごめんね、杏里」



すごく申し訳なく思う。


大好きな人にそんな顔をさせてしまうことが、すごく辛い。だから今までずっと誰にも言えなかった。




「なんでそんな思いまでして・・・・バカなの?史は」


「うん、自分でも自覚してる。だけどそれでもどうしようもないくらい好きだから」


「うん・・・・それはわかるよ。史の表情を見ればけっきょく今も昔も穂高先輩が一番なんだなって」



やめられるものなら、とっくにやめてる。


私だって出来ることならもっと楽な恋がしたかった。


だけど相手を選べないのが恋だと思うから。




「どんな結末になろうともこの人に近づきたいって、私なりに覚悟していたはずだったんだよね。だけどまさか浅見先輩がこうして再び希和の前に現れるなんて・・・・」



想定外だった。


完全に忘れることはできなくても、会えないことで少しは気持ちも薄まっていってくれるかもしれないと勝手に期待していた。


事実、浅見先輩と再会するまでの希和からは、付き合い始めた頃にときどきあった、何かを思い出しては見せる哀し気な表情が消えたように思えたから。


希和と付き合ってから、ずっと私は浅見先輩の影に怯えていた。


希和の心のすべてを独占していた浅見先輩の存在が怖かった。


だけど付き合いの年月が長くなるにつれて、どこかでもう大丈夫かもしれないと思っていたんだ。



ーーーそれなのに。



浅見先輩は再び希和の前に現れた。


しかも離婚していたなんて。




希和はそのことも知っているのだろうか・・・・




「関係ないよ」



ようやく涙を止めた杏里が、ぐっと眉間に眉を寄せた。



「付き合い始めた時になんて言われようとも、もう5年も前のことだよ。やっぱり元カノは元カノでしかないし、今さら関係ない」



・・・・関係ない、か。


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