鈍色の空【完】

第8章







“話したいことがあるから会いたい”






そう希和に連絡したのは、そのすぐ翌日のことだった。



ただ会いたいだけではなく、話があると告げたのは、会って土壇場で自分が逃げられないようにする為だった。


事前にこうして希和に予告しておけば、希和は私が隠さずすべて話しきるまできっと問い詰めてくれるはずだから。



希和には「何かあったのか?」と心配そうな声で何度も聞かれたけれど、会ってから話したいからと何とか通話を終わらせた。




約束は今週末の土曜日の夕方だ。



本当は希和は金曜の夜も時間が空いていると言ったけど、その日は私の都合が悪く土曜日になったのだ。











「皆原ちゃん、明日の夜ってどうなってるか聞いてる?」


「あ、今日お昼にちょうど井ノ口さんに会って
“桜庵”というお店に19時に予約したって言ってました」


「そっかー、ん、19時ね、うん。まぁ普通はそれくらいの時間だよね」



分厚い資料を抱えていた三上さんが、片手で髪をくしゃっとかきあげた。



「よし!千家さんの祝賀会にさすがに遅れるわけにもいかないから、今日も泊まりで頑張るかなー」



いつもはコンタクトをしている三上さんだけど、ここ最近はずっと眼鏡姿だ。


少し伸びかけのショートボブに、ネイルも所々禿げてしまっている。


いつだってオシャレに手を抜かなかった三上さんでも、さすがにそんなことに構っていられなくなるほど今の仕事量が膨大すぎるのだろう。


相変わらず会社に寝泊まりが多いけど、ちゃんと睡眠時間を確保できているのか心配になる。



「あの、大丈夫ですか?私も今日も何時まででも手伝いますから」



私なんかが出来ることは限られているけれど、それでも猫の手よりは全然使えると思うし。

けれどなぜか三上さんは、呆れた表情で私を見返した。



「大丈夫って、それ皆原ちゃんが私に聞く?」


「えっ?」


「私なんかより、よっぽど疲れきったひっどい顔してるあなたに心配されたくないわねー」

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