鈍色の空【完】

第3章








「野良ちゃん、今日も絶好調ですね」



"なぁー"



「元気よすぎて困ってる」


「良いことじゃないですか」



"ふなぁ!"



「良くねーよ。相手しないと仕事の邪魔してくんだよ、こいつ」







野良ちゃんの威勢のいい返事のあとに、穂高さんの呆れ声が続いた。



今朝もまた例の"あ、あ、あ、あ"という鳴き声が聞こえ、釣られるようにベランダに出てしまった。




「つーかさ、俺もベランダにいるってよくわかったな」



「だって、煙草の匂いがしましたから」



「・・・あぁ、なるほど」



初めて会話をした時から、風に乗ってほのかに香るビターな匂いに気付いた。


きっと穂高さんは煙草を吸うためにベランダに出ていることはすぐにわかった。

これだけの頻度で遭遇するということは、かなりのヘビースモーカーなのだろう。



・・・・そういえば。



「穂高さんってなんの仕事されてるんですか?お部屋でお仕事されてるんですよね?」



ずっと気になっていたっけ。


森さんが編集者ってことは作家さんか何かなのかな。


そういうお仕事してる人ってサラリーマンとは全然違うし、すごく未知の世界だ。


実はすごい人だったりして。




「え?皆原さん、なに、俺に惚れたの?」


「はぁ?!・・・職業聞いただけでなんでそうなるんですか」


「だって俺に興味を抱いたみたいだから」



いや、だからってなんでいきなりそこから"惚れた"になるのか・・・・・。



「だいたい私も穂高さんも、まだ一度も実際にお会いしたもことないじゃないですか」


「それって関係ある?」


「え?」


「皆原さんは顔で恋愛相手を決めるわけ?」


「・・・っ、そうじゃないですけど」


「まぁそれだけじゃないっつっても、やっぱ当然容姿も重要か。俺は皆原さんの顔、けっこうツボだったしな」


「え・・・・・・」



私の顔って。



「私達、会ったことがあるんですか・・・?」


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