Honey, so sweet!!①【完結】

ステージ4 /もしこれが恋ならば


待ち合わせは、夜の9時。


地下鉄を降りて、私は夜の街を一人、待ち合わせのピアノバーに向かってとぼとぼと歩く。



社員食堂で寺田さんと別れてから、デスクに戻り、うちの課専用の、
出勤予定などを書き込むホワイトボードをよくよく見たら、確かに【寺田】の行のPMの所に、
"Aデザイン事務所打合せ/4:30~外出(直帰)"と書かれていた。



興味ないから見ない訳じゃなくて…
本当は見なくちゃいけないのはわかってるんだけど。

正直、目の前の自分の仕事に精一杯で他の人の動きなど全く頭に入る隙間もなかった。


隣の理子ちゃんがなんの仕事をしているか、今日は何時に上がるのかさえ私は分からないくらいなのに。




だから…



こんな、自分の事で手一杯の私に、セクハラの相手や、ましてや、惚れたハレたの色恋沙汰など処理しきれない。


軽いノリで絡まれても、私は軽く返せないのだ。
なんてったって、5年も恋愛してないんだから。
自慢じゃないけど。


男の人に対しての免疫も今となっては枯れ果てた。




仕事を覚えるまでは、慣れないことはせずに、地道に働いていきたかったのに……


ため息をつきつつも、通い慣れた路地を、懐かしさを噛み締めながら歩く。



今の会社に入る前。

本業だったブライダルプレイヤーの合間に、私はここ、麻布にあるピアノバー“ガンダーラ”で、アルバイト奏者をしていた。




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