偽恋ーにせこいー  1989 中学3年生

 Mは男子卓球部に所属していて、1年の時に友達の好きな人だって教えてもらった。

中肉中背で、顔もかっこいいとは言いにくかったけど、妙に愛嬌があって、男子にも女子にも先生にも好かれるクラスの人気者のような人だった。

友達の恋愛の手助けで話すようになり、2年の時同じクラスになり、更に仲良くなった。
「あんたたち、カップルみたいね。」って言われる位仲良かったけど、Mをそんな風に見た事なかったし、Mの好みが私とは全然違うタイプなのも知っていた。

Mも私の男遍歴を一番近くで見てきたから、私を恋愛対象としては見てなかったと思う。
私が他校の男子の写真撮ってるのを、懲りない奴って顔してニヤニヤ笑って見ていた。


 そんな中2月上旬、パパとママが大喧嘩した。

原因は、ママがパパの友達から買った宝石をパパが見つけ、ママが内緒にしてたのを知らなかった私が、パパの友達が売りに来たって説明した事。

終いには離婚だとか騒ぎ出して、私は自分のせいだと居たたまれなくなり家を飛び出した。

空気がキンと冷えた静まり返った夜の公園でひとりブランコ漕いでいたら、ふと電話ボックスが目についた。

Mに電話しようかな…

その時、何でそんな事思ったのか、何でMだったのか今でも分からないんだけど、Mに電話していた。

「もしもしFですけど、Mくんいらっ…」
「あ、僕。」直ぐに私と分かり言葉を遮るM。
私も声で分かったんだけど、一応きちんと言った方が良いかなと思ってね。

「あのね、愚痴聞いてくれる?」
どう切り出して良いか分からなくて、唐突に話し出す私。

「は!?」いきなり始まって慌てるM。

「愚痴、少しだけ聞いて。」
「うん。」

「あのねお父さんとお母さんが離婚するって。」
「嘘!?」びっくりした声。
「どうしようー。」

内容話してるうちに、今まで我慢してた涙が次々と溢れてきてわんわん大号泣。

Mは「泣くなよ。大丈夫だよ。」って、私が泣き止むまでずっと付き合ってくれてた。

私はだんだんと気持ちが落ち着いてきて、家に帰る事が出来た。

それから暫くはお互い意識しちゃってギクシャクしてしまったけど、時間が経つにつれて元に戻っていった。


 けど、私の中でどっか変わった部分もあった。

例えば、Mが女子の肩抱いたり、ひとつの椅子に二人で背中合わせに座ったりしてるのを見た時、何だか心がザワッとする感覚がしたり。

こんな事もあった。
私が教室のドア近くで友達と話してたら、Mが教室を出ようと近づいて来た。

その時何を思ったのか、ドアの取っ手に遠い右手で開けようとしたから、一瞬私の視界が真っ暗になった。

Mの胸元が目の前に来て、端からはハグしてるように見えたんじゃないかな。

Mは私の反応を楽しむようにニッとして出て行ったけど、私は少しパニック状態になってた。

相変わらず、いろんな人にフラフラしながら、どっかMを目で追ってたような気もする。


 そして、4月。

クラス替え前日、私はおまじないをした。
゛My Birthday゛という占い雑誌が私のバイブルで、そこに載っていたおまじない。

Mと同じクラスになりますようにと祈りながら。

その頃気になっていた男子もいたけど、そのおまじないは゛Mと゛って祈ってた。

中学最後のクラス。

誰と一緒になるかで私の恋も決まる。

きっとどっかで、もうフラフラしたくないと思っていた。

もし、もし神様が私とMを同じクラスにするような事があるなら、それが答えだ。

占いで、Mが私の"赤い糸の人"って出たの確かめたかった。


 そしてクラス替え当日。

私はMと同じクラスになった。

この事が私の迷いを吹き飛ばした。

同じクラスになれたのも8クラスある中奇跡に近い事だったのに、委員会も一緒になった。

2年の時の担任が、3年の担任に゛最初の総務委員にはMと私が適任だ゛って推したらしく、鶴の一声で決まった。

そして、最初の各クラスの総務の集まりがあり、委員長決めがあった。

生徒会長が、「今期の委員長は女子にしてもらいたい。」と提案した。

ザッと集まっているメンバーを見渡して、私は意見した。
主要メンバーは既に生徒会で役員してたし、顔ぶれ見て、適任者は居ないと思ったから。
「女子には無理なんじゃない?
なかなか意見言えないでしょ。」

すると生徒会メンバーがみんなでニヤッとした。

ーは!?
もしや!!
時すでに遅し。

「ーということで、Fさんお願いします。」と生徒会長。

はめられた!!

こいつ、私が意見するの分かってて提案したんだ!!

生徒会長は、私と同じ町区で私の性格をよく知っている奴だった。

ひとり青くなっていると、Mが手を挙げた。

「じゃあ、俺、副委員長するよ。」



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