偽恋ーにせこいー  1989 中学3年生

エピローグ

 Iくんとは、それから偶然2回会った。

高校に入学して、KとJ中に行った時。
Kが所属していた吹奏楽の顧問に会う為に、お昼休みの時間利用して、音楽室へ行った。
そしたら、5限目がIくんのクラスだったみたいで音楽室に来た。

Iくん、私が来てる事に気づいて、同じクラスになってたTくんと廊下に出て来た。
けど私、恥ずかしくて、何話して良いか分かんなくてKから離れなかった。
Iくん達も、そんな私の様子感じて近づいて来なかった。

5月に入り、妹からIくんの話を聞いた。
「Iに゛好きな人出来た?゛って訊いたら、
゛もう女は信じない!゛って言ったから、
゛Rちゃんが、あんたに会いたがってたよ。゛って教えてやったら、スッゴいニコーッてしてさぁ。
I、まだRちゃんの事忘れてないと思うけど…」

とても複雑な気持ちだった。
私はこの頃、他に気になる人が出来てた。
Iくんの事考える比率は、どんどん低下していた。

そして、その話から1週間位経った頃、今度はIくんが行ってる゛くもん゛教室の前で偶然会った。

私は妹とコンビニに行った帰りで、教室から出てくる人影に見覚えがあるような気がした。

その人も私達に気づいて走ってきた。
Iくんだった。
久しぶりのIくんのクシャッとした笑顔。
私には、その笑顔が眩し過ぎて直視出来なかった。

「ーお久しぶりです。」
何て他人行儀な私の話し方。

「…」Iくん、途端に笑顔が消えた。

「身長、また伸びたんじゃない?」
私も無理に笑顔作ろうとするけど、上手くいかない。
ごめん、Iくん。
もう無理。
私、他に好きな人出来た。
思わず、先に行ってた妹を追っかける。
Iくんも走って教室に戻って行った。

そして、Iくんに手紙を書いた。
内容はもちろん別れ話。
とっくに終わった恋だった。
けど、自然消滅にはしたくなかった。
凄く短くて自分勝手な、Iくんの事全然思いやれてない文面。
ーごめん、好きな人が出来たー

高校に入ってから、たくさんの恋をした。
相変わらず、フラフラした時期もあった。


 4月から、3年になる年の春休み。
妹が、部屋にいた私に声かけてきた。
「Rちゃん、電話。ーI。」
何で今頃?って感じで私を見てくる。

Iくん!?
Iくんが私に電話!?
久しぶりに聞く名前に驚き、電話してくるって状況に更に驚く。
本当にIくんなの?
ドキドキしながら、受話器をとる。
「もしもし…」

「…久しぶりだね。」懐かしい声が耳元で囁く。

ブワッと中3の頃にタイムスリップした感覚に陥る。
「そうだね。あ!N校合格おめでとう!!」
新聞にIくんの名前、載ってた。

「ありがとう。」クスッと笑うIくん。
余裕だったみたいだね。
変わんないね。

「TくんはやっぱK校の芸術コースだったね。」
Tくんの名前も見つけてた。

「うん。あいつ絵、すごい好きだから。」
二人の仲も健在みたい。
なんだか嬉しくなった。

「…今、家誰もいないの?」
前、電話した時の事を思い出す。

「うん。俺一人。」
そこも全然変わらない。
相変わらず厳しいんだろうな。

「Iくん、部活、何かするの?」

「たぶん、しない。
俺、今バンドしてて、そっち続けるから。」

そうだった。
妹から聞いたことあった。
Iくん、ボーカルで凄く上手だって。
本当、この子もて男の王道行ってるって感じ。
「楽しんでるね、いろいろ。」
思わず笑ってしまった。
卒業式も、ボタン全部なくなったって聞いた。
本当Oみたい。

「何?」
私が笑ったから、不思議そうに訊くIくん。

「ううん。彼女は?」当然、いるよね?

「ーいない。」

意外!!
「気になる子もいないの?」
バンドに熱中し過ぎてんのかな?

「…卒業式に、ずっと友達だと思ってた子から告られてびっくりした。」

「同じ高校?」

「うん。どうして良いか分かんない。
俺は今のままでいたいけど、もう難しいのかなって…」本当に困ってる声。

「…嫌いじゃないんでしょ?」

「うん。けど…好きかって訊かれるとよく分かんない。」

「そっか…」
私だったら付き合ってみるけど、Iくんは、そういう訳にはいかないんだろうな…
本当、真面目って言うか…純粋って言うか…
そこも変わってない。

「…俺さ、あの時の事どうしても謝りたくて。」

「…謝る?」
私に謝るような事は何もないと思うけど。
むしろ私が謝れって感じよね。

「俺、すごいガキでさ、自分の気持ち押しつけて、俺が知らない過去にこだわって、受験生だったのに、そんな事もお構いなしに傷つけた。
今、自分が同じ年になって、やっと気づいたって言うか…
ずっとどっかで考えてて…
どうしても忘れられなくて…」

Iくんが何で電話してきたのか、分かっちゃった。

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