シークレット ブレス 【完】

第3幕 /秘密の片思い


扉の向こうから、伊吹先輩が楽器庫のドアを開けた音が聞こえて来ても、私はまだ動けないでいた。


先輩の柔らかい唇、意地悪な笑顔。


頭を撫でた大きな手。


すべてが私の心を捉えて離さない。



信じられない。ありえない。


さっきの出来事すべてが、伊吹先輩との秘密だ。


また、秘密が増えた……。


それが、苦しいほどに胸を焦がしている。




キスは、私に秘密を作るためで。

先輩に恋愛感情なんてないんだと思う。


頭を撫でてくれたのも、まるでペットにするみたいだった。



だから、期待なんかしちゃいけない。



人気者なのに人を寄せ付けない伊吹先輩。


そんな人に恋なんて、以ての外だ。


でも、もう止まらない。


止められない。



テンポが加速する自分の心臓を感じながら、私は誰にも言えない秘密の恋を自覚した。


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