シークレット ブレス 【完】

第5幕 /舞台裏で



リハーサル室を出て、先輩の少し後ろを歩く。


まだドキドキが止まらなくて、顔も火照っていた。


黒羽根高校の控え室に着くまでに、なんとかしなくちゃ。


平常心を装ってみるけれど、先輩の背中を見つめるとすぐに、私の頭の中はお花畑になってしまう。



伊吹先輩、一見華奢だけど……胸板が厚くてすごく男らしかった……。


サッカーの有名選手だったんだもんな……。


そんなことばかり考えてしまって、抱きしめられた余韻でまだぽわぽわしてしまっている。


ダメダメ!


これからコンクール本番なんだから!


課題曲の最初には、フルートの先輩たちと3人だけで吹く、フラッタータンギングのソリがあるんだし。


絶対に失敗できない。



ぐっと気を引きしめて廊下を歩いていると、たくさん並んでいる控え室から、それぞれの高校の音出しの音が響いていることに気が付いた。


廊下には、ほとんど人がいない。


きっとみんな、最終調整に余念がないんだろう。


私ももう一度ピッチを合わせなきゃ。


高いB♭のピッチに、まだ少し自信がない。


前を歩く伊吹先輩を追い抜かす勢いで、歩く速度を上げると、不意に目の前の控え室のドアが開いた。


そこから、見覚えのある制服が視界に飛び込んできた。

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