Wedding March!【完】

第1章 /初デート

槇尾さんとのデートの日。

約束の4時間前に起きたアタシは、念入りにヘアメイクをした。

念入りだけど、テーマは『清楚』。
気合いが前面に出ちゃまずい。
こなれた感がないと、浮いてしまう。

必死になると、額に汗が滲んできそうで、世間様に申し訳ないと思いつつ、冷房全開で支度をした。

服なんか、たぶん10回以上着替えた。
前日までに決めておいた服を着たけど、なんかイマイチな気がして、他の服を出して着て、また脱いで、を繰り返した。

結果、家の中が泥棒に入られたみたいになったけど、片づけている暇はないのでそのままにしていくことにした。

近所のコンビニまで迎えに来てもらうことになっていたので、待ち合わせの15分前に到着して待った。

いつも初デートのときはそれなりに気合いが入るものだが、気合いを入れ過ぎてはいけない、『清楚』がテーマだ、そう思うと余計に気合いが入る。

そもそも、まだ『清楚バージョン絵梨子』が確立していないせいか、演じ切ろうとするあまり力が入る。
でも、力が入っているところが表に出てはいけないと思うと、緊張する。

その結果、待ち合わせの15分も前から待機するという最も気合いが現れているような状況になってしまった。

自分は15分も前に来てしまったが、槇尾さんはむしろ遅刻気味で来てほしいと思った。

万が一、10分ぐらい前に来てしまったら、アタシがそれよりも早く来ていたことがバレてしまう。

そんなことになったら、アタシがものすごく気合い入ってる人みたいに思われてしまう。

いや『みたい』じゃなくて、気合い入っちゃってるんだけども。

ただ、コンビニの前にずっと立っているのも恥ずかしくて、飲み物を買ったりしてみた。

結局、槇尾さんは待ち合わせ3分前ぐらいに現れた。

「ごめんね、待たせちゃったかな?」

爽やかな笑顔で運転席から降りてきた槇尾さんは、やっぱり素敵だ。

「あ、いえ。私もさっき来たところです。」

「そう?じゃぁ、行こうか?」

そう言って、さりげなく助手席のドアを開けてエスコートしてくれた。

これができる男の人って意外と少ない。
アタシの欲目なのか、槇尾さんがやってもキザに見えないから不思議だ。

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