『南十字星〈サザンクロス〉』Ⅰ 【完】

第2章 (孵化) /2話

家に帰ると、そのまま着替えて私は町へ出た。

まだ夕方だったけど、冬の夕方は5時にもなると、待ちきれないかのように一気に夜が押し寄せてくる。

あれから、私の回りの色々なものが大きくかわった。

歩きながら街のショップのウインドウに自分の姿を見つけ、あの夏の終わりの記憶が遡〈さかのぼ〉ってきた。




……。

いつものように家に帰った私が、玄関にある黒い紳士物の革靴を視界に入れたとき、丁度ママが奥の部屋から出てきてリビングに入るところだった。

指に光る大きすぎるダイアは、かえって下品な印象を私に与えた。




溜め息をついて、だけど息を潜めて自室に戻り、シャワーすると髪も乾かすことなくTシャツに短パンそれにパーカーを羽織ると言う軽装で家を出た。

夏の名残を残す夕方の風は生暖たかくて、首筋に髪がひっついてくるのは髪が濡れているからか、汗をかいているからか分からなかった。

頭に浮かぶのはあのダイヤモンドの事ばかり。

ママはあのダイヤと引き換えに何を相手に与えるんだろう。

それは、いずれ私にも何らかの形で関わって来るのだろうか。



いつか…



この生活の《つけ》が返ってくるのではないだろうか…

ブルッと体を震わせた。

それは夏の終わりの夜風のせいか…


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