『南十字星〈サザンクロス〉』Ⅰ 【完】

第2章 (孵化) /4話

鐘と共に押し寄せる人だかりで賑やかな学食に向かう渡り廊下には、既にお昼の時間ですよ~と誘う香りが漂っていた。




「うちの学食のおでんって滅茶苦茶人気なの知ってた?」

「おでん?」

「そう。冬限定で3月頃までやるらしいのよ」

「おお、それうちの先輩も言ってたな」

「でしょ?」

それを聞いていた倉田が

「あれ?だけど七緒は《練り物》苦手だろ?」

「おでんは練り物だけじゃないよ。ねぇ、紗莉愛!」

「う…うん。そうだね」

私はおでんは給食でしか食べたことがない。

それは細かく切った煮物の様なものだった。

私に嫌いな食べ物はないけれど、わざわざあれは好きと…言うような物ではないと思うけど…



「紗莉愛はおでんは?」

倉田が聞いてくる。

「好きだよ。普通に」

「僕もここのは食べたことないけど、そんなに美味しいなら頼んでみようかな」

「…じゃあ、私も」

その会話を聞いていた七緒はニッコリと笑って

「そうこなくっちゃ!!」

と食券の販売機に並ぶ為に走っていった。

その後ろ姿を見送り、ふとアリーナの方を見下ろした。

「あ…」

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