騎士~KNIGHT~ [完] 

第1章 /9話

主要の駅で乗り換え、片田舎の私の家の有る街まで在来線でゆっくりと揺られながら帰った。

もう売却したと聞かされた家。

それでもこんな時には行くと言えばここしか浮かばなくて…

迷うことなく蘭のマンションから懐かしのわが家に帰ってきた。

夕方出て何時間もかけて乗り継ぎを繰り返し、家に着いたのはもう日付が変わる前だった。





久々に帰る家。

病院に居るときに売却して貰ったから退院してからも1度もここには来なかった。

家の鍵は…

持ってる。

変わってなければそのまま使えるはず。





何よりも売却したと聞いた家には誰も住んでいなかった。

まだ入居してないだけ?

それとももう住んでる人は寝ちゃってる?

だけど窓には雨戸が閉まってて人の住んでる気配なんて全くしていない。

ママのお気に入りのかつての小さな庭は、色とりどりの花を咲かせていた筈なのに…

今は見る影も無いほど荒れ放題だった。





鍵を差し込む。

入った!

回してみると…

鍵は《カチャリ》と音をたてて開いた。

「開いた…」

思わず呟いた。





玄関に入って思わず顔をしかめた。

「くさっ!」

異様な臭いって訳じゃなく、ずっと締め切ったままの状態で夏の暑い時を過ごしたんだろう。

籠りきった空気は有りとあらゆる臭いを含んでいて、何とも言えない臭いを放っていた。

リビングに入って電気をつけようとしたけど電気はつかない。

最初に目に飛び込んで来たのは電話。





私ってどんだけ電話に固執してんだか。

受話器を上げてみる。

無音。

繋がってない。

誰かが全ての契約をを解約したんだろう。

そりゃそうか…

ここは売却したんだってば。





なら…

この家って今は誰の持ち物なんだろう。




0
  • しおりをはさむ
  • 165
  • 3093
/ 554ページ
このページを編集する