騎士~KNIGHT~ [完] 

「これからどうするつもりだ?」

「私も…来年の3月には20歳になるの」

私は携帯を握りしめて

「柊についていくけど柊に迷惑を掛けるつもりもないし。近い内1人暮らしをするつもり。勿論仕事もするし」

蘭を見ると相変わらず無表情のままだった。





私の言葉はちゃんと聞こえてるのかな。

耳にではなく蘭の心に届いてるのかな。

それでもこの淡々とした表情なのかな…





切ない。

蘭の心が返ってこないことがこの上なく切なかった。

そしてそんな蘭を見る度私の中から迷いを消し去ってくれる。





「私は大丈夫だから。ちゃんと病院にも行くし。今度は9月だったよね?ちゃんと覚えてるよ」

そう言うと…

蘭は

「待ってろ」

と言ってリビングを出ていく。

間も無く戻ってきた蘭の手には小瓶が2つ。

それを私に…ではなく柊に渡した。

見覚えの有るそれは頭痛薬と睡眠薬。

嶋田先生が処方してくれた薬だった。





「あまり薬に頼るな。睡眠と食事でできる限り体調を整えさせろ」

そう柊に言うと…

私の頬に手をやりかけてその手は途中で下ろされた。





蘭は1度も止めてはくれなかった。

それに見送ってもくれなかった。

いつものように買い物に出る私を見送るようにソファーに座ったままだった。

残していく荷物の事も何も言わなかった。

捨てられてしまうのだろうか。

そう思うと胸が張り裂けそうに苦しい。

だけどこれが私の選んだ選択だから。





『蘭…』

やはり私の意識とは別に心は蘭を求めていた…



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