騎士~KNIGHT~ [完] 

柊のガックリと項垂れる姿を横目に私はバックを手に

「今日は最初だから2時までで良いって聞いてるからお昼御飯それからでもいい?」

「…いいよ。ずっと待ってるから」

抑揚のない声。

リビングを出る前に柊を振り返ると上目使いで私を見ていた。





それを見て

ふぅ…

と息を吐き出し柊に近付く。

すると柊は豹変したようにニコニコ顔で両手を広げて私を待っていた。

目の前まで行くとギュッと抱き締められ、私も柊に体を預けた。

暫くそうしていて

「柊。時間だから」

と、柊から体を離そうとした。





髪を絡める指。

そして同時に頬を撫でられ…

キスに応える。

柊のキスははっきり言って…深い。

ユリが来てからの蘭のキスを思い出させる。

それが更に私の心を苦しくさせる。

キスの仕方で蘭を思い出すなんて…





『蘭…』

そう心の中で呟きながら私は目を閉じた。

どこまで柊に失礼な人間何だか…

自分で呆れる。

柊の唇が離れ

「…ごめんね」

誰にともなく小さく呟いて私はマンションを出た。








玄関の外まで見送ってくれた柊が、私の後ろ姿に…

「愛李沙…なんの事を謝ってんの?」

と言ったのに私は気付かない。












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