Fight marriage Ⅰ 【完】

第1章 /2話

「いってらっしゃいませ」

運転手に見送られながらホテルのロビーに入ると、支配人が早々に挨拶に来た。





「奥さま…本日はありがとうございます」

と深々と頭を下げた。





私はそこから離れ、中庭の見える窓際に近付いた。

そこからは見事な日本庭園が一望出来た。

大きな池の回りに植えられた桜の木が満開を過ぎ、風が吹く度に吹雪の様に舞い上がる花びらが幻想的だった。





うっとりと見つめていると…

その先に真っ赤なスーツの女の人と黒いスーツの男の人が二人、まるで絵画の様に佇んでいた。

そっと寄り添い、男が女の腰に手を回し歩き出す。

そしてふと立ち止まりキスをした。





「わっ!!」

目の前で繰り広げられるラブシーンに思わず背を向けて頬に手を当てた。







本当は…

私にも彼がいた。

でもこの話が正式になったときに彼とはキッパリ別れた。

一晩泣き明かすことで《決心》なんて格好いいものは手に入らなかったけど、代わりに《諦め》というモノを手に入れた。

嫌いで別れた訳じゃない。

私の一方的な都合だと言うのに、彼は顔を歪めながら

「茉愛沙の足を引っ張る気はないよ」

と言ってくれた。

私の立場はよくよく分かってくれてる人だったから。





そんな彼の事を思い出した…





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