Fight marriage Ⅰ 【完】

第2章 /3話

私と一華は興味が無いから気にしなかったけど、芸能人や有名人がお忍びでよく来るらしい。

そんなのはクラスメートにも居たし。

騒ぐようなことでもない。

彼らも普通の人間だった。

いや。当たり前なんだけど。

世界が違うだけで、私達もある意味有名人に近いんだけど。

その世界では…ね。

でも、その自覚を持っているからこそ、こう言う店に集まるんだと思う。

ここに来る人は他人を干渉しないから。





カウンターの一番端の席に座り

「さっぱりしたカクテルお願いします」

という。

私はいつもカクテルの名前は言わない。

定番のものは勿論有るけどその時の気分をそのまま告げる。

すると、オリジナルのカクテルを作ってくれるから。





「何かあったの?」

「?」

「いつも明るい茉愛沙ちゃんとは違うね」

「ん…色々あって」





短大の頃からよく来ているここは…

敢えて今更取り繕う必要もない。

今となっては素のままの私で居られる数少ない場所。





「色々?」

「結婚したの。私」

「…へぇ」

「でも、したくてした訳じゃないから…息が詰まる」

「なるほどね。最近来なかったのもそう言うことか」

「一華は?一華は来てるの?」

「彼女にも会って無いの?」

「今日会った」

「今日?」

「そう。パーティーだったの」

「じゃあ、お疲れだね」

「そうかも。お酒…回りそう…」

と、そこに突っ伏した。

「茉愛沙ちゃん?ここで寝ちゃ…」

「寝てないよ。ちょっと1人にしといて?」

そう言うと言いかけた言葉を途中で呑み込んでくれた。

私の泣き声に気を使って。





この人は店長の麻木さん。

歳は…聞いたことないけど…20歳半ばから後半位?

この店を1人でやってる。

バーテンダーとしての腕は一流。

食べ物はナッツと多少の果物を出してくれる位で料理はほとんど出さない。

辺鄙な所に店が有るし、看板も表に出さないのにいつもお客さんが絶えることはない。





箱ピアノや、ギターが置いてあって、お客さんが好きに弾いていく。

時にはお客さんが麻木さんにリクエストをして強引に演奏させる。

これが中々の腕前。

幼い頃から楽器を嗜〈たしな〉んできた私たちの耳にも心地よいレベルだった。








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