True lie Ⅱ [完]

3章 /葵

しばらくあの場に立ち尽くし、消えたあの二人の行き先であるマンションの前から動けなかった。

行平純の女と思ったのは何故だろう。

彼が彼処に連れてくる女は黒髪の男へ与える為の女。

私と"同じ"…

私だけが特別だと誰が言った?

私は一時の女。

黒髪の男にとって私は"何"でもない。





全く呆れた。

今まで付き合ってきた人との別れは幾度となく繰り返してきた筈なのに、付き合いもしていない人に、まして"裏切られた"という訳でもない関係なのに…

ここまでダメージを受けている自分に、本当に呆れた。



今受けたダメージを腐食する為にも、私はモユさんに聞かなければならないことがある。

モヤモヤする感情を圧し殺し、キッと前を向くと目的の場所を目指した。

次の予定の為に繁華街の少し北の外れに来ていた。

ここはモユさんに指定されたお店。

この辺の事に全く無知な私は携帯ナビを使いながら店を探している状態で、回りから見たら不審者に近いだろう。

「ちょっと分かりにくいけど『葵』って言うちょっとレトロな喫茶店」

レトロって…イメージ的には昔風なって言うか、古風なイメージだと思っていたけれど、目の前にあるのは…どう見ても古びた倉庫にしか見えない。

窓ひとつ無いその建物は初めて来た客に二の足を踏ませる。

それは中がどんなところか全く想像できないから。

いや、違うな。

中を勝手に想像してしまうから…だ。





外からモユさんに『着いたんですけど…』とメールを送ってみた。

すると1分もしないうちに開いた扉。

モユさんがニッコリ笑って『どうぞ』と立っていた。

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