幸せを知りたくて夢を見た【編集済み】

第一章 /ひかり Side

「ひかり、起きられるか?」


優しく揺り起こされて、わずかに目を開ければあの人がいた。未だに恥ずかしくて心の中でさえも名前がなかなか呼べない。かろうじて柊さん、と呼べるくらいだ。


「は、い」


ゆっくりと身体を起こそうとすれば、すぐに背中に手を当てて起こしてくれる。それに今は甘えさせてもらって、柊さんの服を軽く握る。さすがに腕を持つ勇気はなかった。


「今から別邸に行く。ここにいる組員にも顔を覚えておいてもらいたいから会ってもらいたいんだ、いいか?」


「だい、じょうぶ、です」


カタカタと震えてくる身体を押さえつけて無理やり笑顔を作る。あの時の、捨てられた時の恐怖が、私を地獄へ落として暴力を振るってきたやつらの記憶が、蘇る。怖い、恐い、だけど会わないと柊さんに迷惑をかけてしまう。


「無理はするな。実はここにいない俺の側近たちとも顔合わせがある。無理にする必要はない」


「いいえ、お世話に、なったの、で」


口からうまく言葉が紡ぎだせない。柊さんを困らせたくないのに。

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