その瞳に、涙。

部下の思惑 /II



歓迎会当日。

菅野さんはもちろんのこと、幹事を務める広沢くんや秦野さん、その他の社員たちも定時を過ぎると早めに仕事を切り上げていた。

お子さんのお誕生日だと言っていた営業部長も、この日ばかりは帰宅の準備が早い。

私もこの日は運悪く、やらなければいけない仕事が定時までに片付いていた。

だけど、立場上、部の社員の半数以上が立ち去るまでは席を立てない。

そんな理由を盾に、パソコンに視線を落として無理やりに自分に仕事を課した。

でもそれはあくまでも建前上の理由で、行っても気まずい思いしかしないことがわかっている歓迎会への参加を1分でも先延ばしするための悪あがきだった。

急な仕事が入って、ひとりで残業しなければいけない状況になればいい。

新着メールを何度もチェックしたり、緊急の依頼がかかってくるように念を送りながらデスクの電話を見つめてみたり。

いろいろやってみたけれど、そんなときに限って急ぎの仕事なんて舞い込んでこない。


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