【 Knight / night 】~主従ファンタジーラブコメ~

章タイトル未設定 /16話「どうなっても知らねえぞ?」











 
見るなと言われても、見たくなるのが人間のサガである。



ケイ『じーー…。』



アキ「!」



私がまたまじまじと見ると、彼は困った顔をしてまた赤くなる。



アキ「俺の話聞いてたか!?……ハァ、もういいや…。医務室よりも俺の部屋がいいって言うなら、どうなっても知らねえぞ?」



その目は、念を押すように私の顔を見つめている。



ケイ『…何、襲う気?』



アキ「は?おそ……って、んなわけあるか!医務室で休んでた方が傷の回復も早いだろうと思って言ったの!」



そう言われ、言葉の意味をやっと理解した。



私の左肩の怪我を気遣ってのことだったのか。



アキ「ったく……人がせっっかくお前の怪我を気遣ってやってんのにッ…。」



ケイ『……と。』



アキ「えっ?悪りい、なんて?」



ケイ『…ありがと。』



思ったことを、素直に口にした。



しばらく俯いたまま、彼の顔を見ることができなかった。



見上げれば、顔を紅潮させた彼の顔がある。



アキ「ちょ…ちょっと待て!今こっち見ちゃダメだ!」



彼は焦って顔を隠した。もう見てしまったから、無駄なのに。



ケイ『…分かったから、早く部屋に行く。』



アキ「わ、分かった!分かったから!」































アキ「……。」



ケイ『…。』



薄暗い彼の部屋の中で、私たちはずっと黙っていた。



何を話すべきか、私には全く見当がつかない。



人がいても、会話のない生活が当たり前になっていたからだ。



沈黙を最初に破ったのは、彼だった。



アキ「……なあ。傷、やっぱり痛むのか…?」



心底申し訳なさそうな顔をしていた。酷く後悔している様子だった。



ケイ『まだそんなこと、気にしてたの…。』



アキ「そりゃあ!……だって、俺のせいじゃねえか…。お前が刺される理由なんて、何もなかったのに……俺のせいでッ…!」
























彼の目には涙が溢れていた。閑散とした部屋に、彼のすすり泣く声だけが響く。



アキ「ごめんッ…、ごめんな……。俺は、弱いから……あの時、お前に怪我、させちまった……、」



情けないような、悲痛な声。



アキ「お前を、守りたいのに……俺じゃあッ…、お前を、守ってやれねえんだ…!」



痛々しくて、見てはいられなかった。




ケイ『そんなの――、私が…守る。』



自分でも信じられないようなセリフが口をついて出た。



彼はというと、驚いてきょとんとした顔でいる。



まあ、無理もないだろうが。



アキ「え…お前、今、なんて……。」



ケイ『別に、それも仕事のうちなだけ。特別な意味なんてない。』



彼はますます呆けてぽかんとしている。



その顔も、とても腹が立つのだが。



アキ「で、でもさぁ!お前がまた、俺を庇って傷ついたら…!」



ケイ『いつもなら、怪我なんてしない。ただ、あの時は……勝手に、体が動いて…。』



アキ「!」



何だろうか、先ほどまで呆けていたのが急に嬉しそうな顔になった。



アキ「えっと…それってさ、とっさに俺を守ろうと…してくれたんだよなっ?」



ケイ『……。』



アキ「…黙ってるけど、そういうことなんだろ?俺の勘違い…とかじゃ、ないよな?だとしたら、すっげえ嬉しい♪」



さっきまで泣いていた当の本人は、今ではこんなに満面の笑みだ。



ケイ『泣いたり笑ったり……忙しい人。』



ぽつりと思ったことを述べた。



アキ「へへッ、そういうお前は、いっつも表情変えねえよな♪」



ケイ『悪い?』



アキ「いーや、全然?お前みたいなヤツって周りにいなかったから、すっげえ新鮮。」



ケイ『あっそう。』



アキ「あ、そういやあ…傷、まだ痛むだろ?」



そう心配そうな顔つきで聞かれた。



ケイ『まあ、それなりに痛いけど。』



隠すのも気が引けたので、本心をそのまま述べた。



アキ「そうだよな…、ホント悪かった…俺のせいで、お前にこんな怪我までさせた。……女の子なのに。」



「女の子」というワードに思わず少し反応してしまった。



そんなことは今まで、言われたことの方が少なかったからだ。



ケイ『女の子…。』



アキ「だってそうだろ?たぶん、一生残る傷なんだろうな…。女の子なら、なおさら気にするだろ…。」



そんなこと、今まで気にしたこともなかった。

















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