【 Knight / night 】~主従ファンタジーラブコメ~

章タイトル未設定 /17話「名前を呼ぶよ」












 
薄暗い部屋で、ごく小さなランプを灯し、二人で並んで語り明かした。



さきほどまで取りとめもない会話をしていたが、急に彼が「そうだ!」と声を発した。



何事かと訊ねれば、次のようなことを言う。



アキ「そういえば、お前のこと……ずっと名前で呼んでなかったよな!」



ケイ『……ああ。』



名前を呼び合うことなど、私は毛ほども気にしてはいなかった。



アキ「何だよそのどうでもいいみたいな顔~?お前が気にしなくても、俺はそういうの気にすんの!大事だろ?そういうのってさ。」



どうやら本心が顔に出ていたらしく、彼は無邪気に口を尖らせた。



ケイ『ケイでいい。』



アキ「おう、もちろん。そう呼ぶつもり♪ん?ああでも、皆と同じ呼び方じゃ、なんかありきたりなんだよな~…。」



彼は思案顔でそう呟く。私は嫌な予感しかしなかったのだが。



アキ「女の子だから、やっぱりお姫様とか呼ばれたいのか?」



彼の思考が一向に理解できずにいた。なぜそうなるのか。



ケイ『有り得ない。だからケイでいい。』



アキ「そうか、やっぱり名前で呼んだ方がいいか!あ、俺のことはアキでいいからな?様とか全然いらねーし!俺、仰々しいのは嫌いだからさ♪」



そんなに気軽に「アキ」と呼び捨てにしろという主人もいないと思うが、彼はそういう人格なのだろう。



ケイ『分かった。』




とりあえず、そう言って頷いておくことにした。



アキ「よしッ、じゃあ早速、俺から呼んでみるか♪」























アキ「……ケイ。」



先ほどまでの満面の笑みはどこへ消えたのか、急に真剣な顔つきに



なって私の名前を呼んだ。



私は顔には出さなかったものの、何だか少しむず痒く気恥ずかしく



なり、そのまま口をつぐんだ。



アキ「…おーい?ケイー?……黙るの禁止だぞー?」



そう言い、低い位置まで腰を下ろし、私の顔を覗き込む。



ケイ『……。』



アキ「……もしかして、恥ずかしいのかっ?」



図星を突かれ、ますます居たたまれなくなった。



アキ「困ったな……そんなに黙ってると、お前のこと…変に意識しちまう。」



どうしようもなく、視線が絡んだ。



心なしか、いつもより自分の心音が早い気さえした。



アキ「……なーんてな、嘘だよ♪」



私の顔を覗き込み、からかうように笑う彼。



ケイ『……腹立つ。』



アキ「悪い悪い♪お詫びにケーキ持ってくるな?怪我人なんだから、大人しく待ってろよ?」



随分と、子どもを諭すような言い方をする。



私は決して子どもではないというのに。



ケイ『そういうのは、従者である私がする。』



アキ「え?何だ、いいんだよそんなの!お前は従者とかそういう立ち位置じゃなくていい!」



従者ではないと言うのなら、私は彼の何だと言うのだろうか。



ケイ『…。』



アキ「ははっ、不満そうな顔してら!とにかく、お前はここにいろよ?絶対な?」



そう言い残し、彼は部屋の外に出て行った。



・・・彼が去った後の部屋は、静寂に包まれた。



彼がいないだけで、こんなにも部屋は静かなのだ。



そう思いつつも、私は少しばかりの物足りなさを感じていた。



ケイ『……名前。』



呼んでみようか・・・。













しばらくして、部屋のドアが開けられた。



アキ「おまたせ♪…って、やけに静かだけど、寝てたりしないよな?」



そう言い、静かに中に入ってくる彼。



アキ「お、よかった!起きてたな。」



私の方を確認し、彼は安堵した笑顔に変わる。



その両手には、美味しそうなケーキを2つ抱えている。



アキ「部屋に帰る途中でエミリーに会って、すっげー怪しまれたんだよなぁ。何でアキ様がケーキを2つも持っているんですの、ってさ。」



確かに、エミリーならそんなことを言って目をつけそうだ。



ケイ『ありがとう。ア、……。』



彼の名前を呼ぼうとして、消え入りそうな声になった。



アキ「まさか、今ありがとうって…!?」



やはり、名前を呼ぼうとしたことは上手く伝わらなかったらしい。



だが、彼はとても感激した様子で目を輝かせているので、それでもいいかと思った。



アキ「よかった…!ケーキを持ってきた甲斐があったな!」



ケイ『…ん。』



アキ「ほら、お前の好きな方選べよ♪」



そう言って、彼は2つのケーキを私の前に差し出してきた。











 

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