【 Knight / night 】~主従ファンタジーラブコメ~

章タイトル未設定 /18話「甘いのはケーキではなく」










 
彼が差し出してきたのは、チーズケーキとフルーツタルトだった。



ケイ『んー…。』



私がどちらにするか迷っていると、彼はすかさずこう言った。



アキ「そんなに迷ってんなら、どっちもやるよ♪」



ケイ『え…。』



そんなことを言われ、思わず少しぽかんとした。



アキ「あ、でも!お前女の子だし、夜にケーキ2つもさすがに気にするよな!?悪い!」



ケイ『そんなの、全然気にしたことない。』



アキ「本当か?じゃあ、俺の分もお前が食べていいぞ♪」



その言葉に、私は少し目を輝かせた。



食べ物のこととなるとどうも、無表情を貫くのが難しい。



アキ「……ああ、今のお前、すっげーいい顔してる。」



ふいに穏やかな顔つきでそんなことを言い出す。



アキ「やっぱ、食いもん食ってる時のお前っていいな♪なんかさ、もっと餌付けしたくなるって感じで!」



そう言われると、何だか餌付けされているような気分になった。



それでも、チーズケーキもフルーツタルトも、どちらも美味しかった。



アキ「美味しいかっ?」



ケイ『…ん。』



アキ「ん?あ、口元にクリームついてっぞ?ちょっと待ってろよ。」



そう言い、彼は私の顔に大きな手を伸ばした。



そのまま私の口元についたクリームを拭い、舐め取った。



アキ「…ん、甘いな♪」



こういうことを他の女性にも平然とやってのけるのだろうか。



他の女性がこんなことをされたら、照れつつも内心喜ぶのだろうか。



それが私には、よく分からなかった。



エミリー「ちょおおおおおおおおおっっと待ったなのですわ!!」



その時、エミリーの叫び声と共に、部屋のドアが勢いよく開いた。



アキ「えッ!?どうしたんだよエミリー!?」



エミリー「やはり、ワタクシが睨んだ通りでしたわ!アキ様!ケイ様を医務室から拉致し!自分のお部屋に監禁した二重の大罪!その罪は、相当重いですわよ!?」



何がどうここまで膨らんだのが、エミリーの言葉には大きな誤解があった。



アキ「拉致…監禁…?あの、エミリーさん…それ、誤解なんですけどお…?」



彼の口調もおかしなものになっていた。



エミリー「言い訳などしないでくださいまし!私だって…!ケイ様と二人で夜の茶会をしたかったのですのに…!」



そう言い、彼女は床に泣き崩れた。



アキ「え!?なんだエミリー、そうだったのか!?」



エミリー「いつもいつも!アキ様だけ抜け駆けしてずるいのですわ!ケイ様を拉致・監禁したのですから、それ相応の処罰を受けてもらいますわよ!」



ケイ『……。』



私は無言のまま、彼女がいる方へと歩み寄った。



ケイ『私、拉致も監禁もされてない…。』



エミリー「そ…それは、本当なのですか?」



ケイ『本当。』



エミリー「そんな…では私は、とんだ勘違いを…。」



彼女はすっかり落胆した顔で、床に両手膝をついた。



ケイ『でも、私のこと…心配してくれたんだよね。ありがとう…。』



すると、エミリーは涙ぐみつつも目を輝かせ、



エミリー「ケイ様ッ…!」



そのまま私に抱きついた。



エミリー「ケイ様のこととなるとワタクシは、どうも暴走してしまうようで……、本当にごめんなさいッ…!」



アキ「あれっ?俺は?」



エミリー「アキ様など毛ほども興味ありませんわッ!」



アキ「あ、エミリーもお茶して行くだろっ?」



エミリー「もっとアキ様の邪魔をしていたいところですが、生憎ワタクシはこのあと寝るんですの!それではケイ様、あの…おやすみなさいませ!」



彼女はそう言い残し、ドアに向き直って部屋を去っていった。



アキ「なんか、俺に対する態度とケイに対する態度で差がありすぎじゃねえ?」



彼はそう呑気に笑っている。メイドに酷い扱いを受けてもこの感じだ。



アキ「そーだ!さっきは邪魔が入ったけど、今は二人っきりってことで……」



何だろう。言葉の続きが少し気になった。



アキ「ケイに、俺の名前でも呼んでもらおうかな♪」



ケイ『!』



アキ「ちゃんと呼んでもらったことなかったし、俺もケイって呼ぶようになったことだし……いいよな?」



穏やかに微笑み、私の視線まで屈んだ彼と。目線が同じ位置になった。



ケイ『……面倒くさい。』



アキ「面倒くさいはナシ!」



ケイ『…呼びたくない。』



アキ「呼びたくない?それまた何でだよ?」











ケイ『……恥ず、かしい。』



なんとも消え入りそうな声だった。








 

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