【 Knight / night 】~主従ファンタジーラブコメ~

章タイトル未設定 /21話「特別な呼び名」






 
アキ「まあ、正直言うと…お前が呼んでくれんなら、何でもいいんだけどな。」



それは何故か聞こうとしたが、すぐに続けて彼が言う。



アキ「名前呼ばれるのって、こんなに嬉しいことなんだな…。お前に出会うまで俺、全然知らなかった。」



そんなの、私だって同じ……ん?って、私は一体何を?



心の中でぶんぶんと首を横に振った。



アキ「アキオって言う俺のあだ名(?)も、他のヤツはそんなふうに呼ばねえし、何かこう…お前だけが俺をそう呼ぶっていう、特別感があって。アキオって呼ばれんのは、俺は結構好き♪」



そう言い、眩しいくらいニカッと笑ってみせるアキオ。



ケイ『…じゃあ、もう二度と呼ばない。』



そんなアキオに、こんなふうについ意地悪を言いたくなる。



アキ「えッ!?」



ケイ『……嘘。』



そうぽつりと呟いた。



アキ「…ッ!」



すると、彼は急にぱっと顔を赤く染めた。



そのまま黙り、ぼーっと私の顔を見つめた。



ケイ『…そんなに見つめられると、顔に穴が開くんだけど。』



そう吐き捨てると、アキオは我に帰ったようにはっとする。



アキ「わ、悪りい!ハハッ、なん、つーか…さ。」



今度は罰が悪そうにもじもじとし始める。



アキ「ああ…こういうことは、素直に言った方がいいよな…。」



素直に言った方がいい、とは…何だろう。



アキ「悪りい、つい……俺、お前に見惚れてた。」



訳が分からなかった。先ほどの私の言葉、態度の一体どこらへんに



見惚れるようなところがあっただろうか。



私が無表情のまま考え込んでいると、アキオが慌てて、



アキ「あ、ああ!もう遅いから寝ようぜ?なっ?」



そういえば、現在は深夜なのだということをうっかり忘れていた。



ケイ『…ん。』



私はそうぽつりと呟き、アキオの布団の中へもぞもぞと、何のためらいもなく入っていった。



アキ「!」



すると、アキオはまた顔をぱっと染めた。



ケイ『何か、問題でも…?』



アキ「い、いや!お前が何のためらいもなく俺の隣に来たから…ちょっと予想外だったってだけでッ…」



そう必死になっている姿は、どこか言葉を探しているようだった。



アキ「とにかく!他の野郎とは、こんなふうに安易に寝るなよ!?まあ、俺はいいけどよ…。」



何だ、結局、そんなことが言いたかったのか。



ケイ『別に…アキオじゃなかったら、寝ないけど。』



自分の本心を、素直に、何の装いもなく答えた。



アキ「!」



すると、さきほどまでのうるさいアキオはどこへやら、



アキ「……そっか。」



心配そうにしていた眉は少し解かれ、ほっとしたような



穏やかな表情で彼はそう答えた。



間近には、アキの顔があって、私たちは一緒のベッドで横になっている。



なんとも不思議な感覚だった。



誰かと一緒に寝たことなどなかった。



ここでアキオがくしゃみをしたとすれば、すぐに私の顔に



降りかかってくるのではないか、そのぐらい近い距離だった。



誰かがこんなにそばにいるとは、なんて安心するのだろう。



いや、他の人ではきっと安心感など覚えない。



彼だからこそ、なのだろうか。



今まで心の中にあった不安でもやもやした感情は、



いつの間にか消えてしまっていた。



それはまるで、憑いていた悪魔が消えたような清々しさだった。



アキ「何だ、やけに安心し切った顔になってる。」



そう言って目の前で微笑んでいる彼は知らないのだ。



私が今まで、どんなふうに生きてきたかを。



知らなくていいと思った。むしろ、知らないでほしいと思った。



ケイ『平穏が約束されている生活のせいで、どうも私は、平和ボケしてる…。』



相変わらずボソッとした口調で答えた。



アキ「……なあ、ケイ。お前は、今まで一体…」



ケイ『……。』



そこには、小さい息づかいと、安らかな寝顔があった。



子どものようにあどけなくて、全体的に線が柔らかい。



アキ「…ったく、安心し切った顔して寝てやがる。」



ふっと微笑み、ケイの小さな頭を大切そうに撫でた。



アキ「……ケイ。」



名前を呼んでも答えることはない、安らかな寝顔。



こんなに近くでその寝顔を見ていると、



アキ「…ッ。」



思わずぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られる。



アキ「……ケイが怒るから、やめとくか♪」



そう言い、目を閉じれば、自分も深い夢の中へと落ちて行った。










 

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