V.I.





「ある日お腹を空かせた黒猫が幻のネズミの泉と言われる場所を見つけました。勿論黒猫はお腹を空かせているので、その泉に飛び込みました。けれど、泉の中には100匹のネズミが。ネズミ達は敵襲だと黒猫に襲い掛かりました。さて、黒猫はどうなったでしょう。」

「……負けた?」

「そう。黒猫は返り討ちに遭って、そのまま死んだ。」



惨すぎるだろ。なんちゅー話してるの。

あたしの怪訝な顔なんか気付きもしない、黒猫とネズミの話に何故か深く入り込んでしまった2人。



「流石に黒猫だって勝ち目はないだろうね。」



あたしは首を傾げた。

はて、ネズミの集団に襲われたところで猫は本当に死ぬのだろうか? イソップ童話に伝えられる『熊と蜂』みたいに命かながら逃げ出し、助かるんじゃないだろうか?

死ぬなんて大袈裟な話だ。



「動物は本能のまま生きる。獲物を見つけると一目散に走って捕らえる奴も居れば、ゆっくりと近づいて狩る奴も居る。それは人間も例外じゃない。」

「人も?」

「欲しいものが無料でそこにあったら、持ち帰る人は少なからず居るからね。」



難しい顔をしていた蓮が遂に理解が追いついたように表情を明らめた。何かに弾かれたように目を大きく開いて口角を上げる。



「もしかして、女の子お持ち帰り的な?」

「そうそう。そうゆうこと。」

「…………。」



何がお持ち帰りだ。

そんなの、ただ欲の塊を晒してるようなもんじゃん。


例えだけど、そこで意気投合した2人にあたしは小さく諦観した。そう言えばコイツら似たような性格してるんだったわ…と苦笑した。


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