V.I.






乾いた発砲音が店内を駆け巡ると、一瞬で静寂が訪れた。それは時間が止まっているような錯覚を起こしてしまうくらいのものだった。


その中でたった1人、バケモノにも死神にも見える真っ黒な彼だけがこの血濡れた世界を支配していた。



──…誰も、敵いっこない。

彼の為だけに作られたとも錯覚《と》れる事が出来るこの場所で彼を欺こうなんて誰が考える?

階段の踊り場で地面に叩きつけられた狂犬は間違いなく、身の程知らずだ。



誰も彼らの足を留める事は出来ない──…死神の行く先は死神が居ることで災いが齎され、均衡か保たれる。

つまり、死神でしか成し得ない場所だ。


落とされ、踏み躙られ、生贄とされる狂犬だけがこんな所まで這い上がって来れる。彼らはそれを導きだとは気づく事は一生ない。



じゃあ、あたしは?
あたしはどうして導かれたの?

どうして──…ここに在《い》るの?


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