Luna.

雁字搦め








「――……天国ってどんなとこだと思う?」


お風呂から上がると表紙に大きく“クリスマス特集”と書かれていた雑誌を捲りながら彼があたしにそう聞いた。


クリスマスは確かにキリストの降誕を祝う祭りの事を言うし、サンタクロースやトナカイの他に天使を想像させるけど……とあたしは眉を寄せた。

どこからそんな発想が出て来たのだろうか。



「アダムとエバが過ちを犯して追放された場所。」


だから、あたしはそう答えた。

たった少しの知識を声に乗せてからギリシャ神話の天地創造の話を思い返していると、彼は苦笑していた。



「……女子ならもっとメルヘンな回答しろよ…。」


否、失笑の方が正しかったかもしれない。

彼はきっと「綺麗な花が咲いてる草原」とか「幸せで暖かな場所」とか可愛らしい女の子が言うアレを言って欲しかったんだと思う。



「つか、“エバ”じゃなくて“イブ”じゃね?」

「どっちでも可なのです。」

「……なんでも良いけどメルヘン寄越せよ。」



残念ながらあたしはメルヘンチックな頭は持ち合わせてないから、余計に眉を寄せて濡れた髪の水分を拭き取った。


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