カラスの瞳に映るもの

第一章 /それから








side:夜宵




「……くぁ……」



春の暖かな日差しに思わず欠伸が漏れる。




「はよー!」


「お! お前今日は遅刻しなかったんだな!」




と、前方に登校中の白鳥学園の生徒が見えた。



その白い制服の姿に整いすぎてる顔の銀髪の男を思い出し、自然と眉間にシワが寄った。



…あの時見つかったのが私でよかった。



もし下っ端の子とかだったら言いくるめられただろう。そう思えるぐらい奴らの、三族のトップ達の威圧というかオーラは半端なかった。



特にアイツ、“タカ”のトップ。アイツの前じゃ皆イエスマンになるんじゃないかと結構本気で思ったりする。



あんな圧、どこから出るんだよ。目力強すぎんだよ。







「夜宵! やぁっと来よったか!」




つらつらと昨日の文句を並べている私の目の前に現れたのはちーちゃん。



「ど〜したの、朝から仁王立ちなんかしちゃって〜」




「はいはい、今のウチにそんな下手っぴな誤魔化しは効かへんからな!」



「………」



「はぁーい、沈黙は肯定ととりまぁーす」



故意にイラッとする顔でそう言ってきた。



「…ちゃんと分かってるって、昨日のことでしょ〜?」



未だに仁王立ちしてるちーちゃんを追い越しながらそう言う。



「いーや、その顔は分かってへん!」



慌てて私の半端後ろを歩きながらそう怒った。



「連絡しなかったのは本当に悪かった思ってる」




昨日、あの後、“タカ”のトップの私を送るためのバイクに乗る前、完全に存在を忘れていたスマホを見ると、おびただしい数の着信とメールに事の重大さにやっと気付いたのだ。




発信元は主にちーちゃんと小波。



飛ばしてもらって着いたアジトでは半ベソの小波にコッテリ叱られた。



アイツに誘拐もどきをされる前に連絡はしとくべきだったよなぁ〜。



なんて一人で反省をしていると、「ちゃう! それやない!」と怒鳴られた。



え、違うの〜? じゃあなんだ?




あ、もしかしてーー




「ちなみに夜宵が昨日何してたか本当のこと言わんことでもないからな」



丁度思ったことを先回りで言われ振り返る。



ちーちゃんや小波には同盟の話はしてない。



時間を忘れて暴れていたことにしたのだ。



初めはしようかとも思ったんだけど、どうせ破棄になるような話をして動揺させる必要もないかな〜って思ったわけですが、




「なんや、分かっとるわ。夜宵があんな時間まで暴れれるわけないやろ。飽き性なくせして」




「あぁ〜……」



鋭い、鋭いよ忍者。



「忍者ちゃうわ。ええか、ウチがゆーとんのは昼から無茶しに行ったことや!」



「……え、それ?」




「“それ?”やないわ! 昨日の晩、小波からアンタが帰ってこーへんって聞いた時一緒に聞いたわ、アンタが昼から暴れに行ったって」



「お日さん出てる時から行って暴れて、ほんで誰かに顔バレたらどーすんねん! 女なんて結局、単純な力では男に敵わへんねんで!?」




なるほど、やっと何に怒ってるのか分かった。






「それともなんや実はゴリラなん?」






「はい?」






え、待って。……は? ゴリ……は?




「ゴリラなん?」



混乱してる私をよそに重ねて聞いてくる。



「え、や、ゴリラじゃないです」



取り敢えずそれだけでも答えると真面目な顔で頷いた。



「せやったらもう、そんなアホなことしたらあかん」



なんだコイツ。とんだシリアス泥棒だな。さっきまでの緊張感を返せ。



「ええな!?」とすごい剣幕で詰め寄ってくるちーちゃんも、シリアス泥棒だと思えばなんだか間抜けに見えてしまう。



このままじゃ終わらなさそうだったので、取り敢えずコクコクと首を縦に振れば一人、満足気な顔をして歩き出した。



「夜宵! 早よ行かな遅刻すんでー!」



「うわっ、待って〜!!」



少し先で私を待つちーちゃんを釈然としない気持ちを抱えながら慌てて追いかけた。








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