カラスの瞳に映るもの

第一章 /場違い


「あ! 桔梗さん!」


『こんちゃーっす!!』


誰かの上げた声に、中にいた人が揃って一斉に桔梗に頭を下げた。


「はいはい、こんにちは。夜宵、こっちよ」


そんな彼らに軽く挨拶し返し私を奥に促す。


誰だ?と探る視線や敵意に近い視線などアウェイな空気を受け流しながら、彼らに一礼して桔梗の後に続く。


まぁ、自分のテリトリーに知らない人が入ってきたら誰でも警戒するもんな〜。


「連れて来たわよ!」


階段を上がったところにある部屋に入るなり、桔梗はそう報告した。


「おかえりぃ。………えっと、どぉーしたのぉ?」


腕を組んだまま寝てる銀髪の膝に足を乗っける形でソファーに寝転がっている、薄浅葱色の船津 翠が目をパチクリさせ私と桔梗を交互に見た。



そりゃあそうだろう。楽しそうに私の腕を掴んでる桔梗に対し、私はというと死んだ魚のような目で遠くを見つめていたのだから。


当たり前だよね? ここに着くまでずっと爆笑され、蛇行運転ですれ違った車のサイドミラーにぶつかりそうになったり、振り落とされかけたり……!! 死んだ目になるのも当たり前だよねぇ!!?



「あー……えっと、ごめんなさいね?」


一応悪いとは思ってるみたいで、桔梗は少し申し訳なさそうにそう謝った。


「大丈夫だよ〜、あ、でも今度は私が桔梗のこと後ろに乗せてあげるね〜」


ヘラリと笑いながらそう返すと、「本当にすみませんでしたァ!」と深く頭を下げ謝罪された。


ふんっ、謝んならちゃんと本気で謝れってんだ。


この数十分、何回走馬灯が見えたと思ってるんだ!! 『ごめんなさいね?』ってそんな軽く謝られてもねぇ!?


コンコンーーー


と、ノック音がしたかと思うと「すみません、桔梗さんちょっといいっすか?」と扉越しに男の低い声が聞こえてきた。


「え、ええ!! もちろんよ! 今すぐ行くわ!」


グッドタイミングと言わんばかりに目を輝かせて「それじゃあ」と、いそいそと部屋を出て行った。



「えっとぉ、取り敢えず座ったらぁ?」


桔梗に置いていかれ所在無く立ちっぱなしの私を哀れそうに見て、寝転びながら自分の向かい側にあるソファーを指す船津。


「あ、うん〜」


その言葉を有り難く受け取り、二人がけのソファーに腰掛けた。



「私は何したらいいの〜?」


初めて座るソファーの触り心地を確かめながらそう尋ねた。


「なにもぉ」


返ってきたのはなんとも簡潔な答え。


う〜ん…つまりはこの一週間この人達とただ一緒にいたらいいってこと? 本当は見極める云々のための一週間だけど、協力する気なんて毛頭ない私にゃ関係ないことだし〜。


……ん? あれ? え、待って〜。それってだいぶ退屈じゃない? 何もせずただ居るだけって。


暇すぎる事実に、せめてゲームとか無いのかと部屋を見渡していると、



「……あのさぁ、」


歯切れ悪そうに、船津が声を掛けてきた。




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