カラスの瞳に映るもの

第一章 /ラストデイ


「いたぞ! 三國 夜宵だ!」


赤木のよく通る声にギクリとする。


「どこだ!?」


「階段の裏!! 幹部室に行こうとしている模様!」


青山に的確に自分の位置と目的を知らされ舌打ちが出そうになる。


「そんなとこに!?」


「皆、集まれ! 逃がすな!!」


黄田の楽しげな声にダダダッと倉庫にいる荒くれ者達が向かってくる。


「チッ」


とうとう舌打ちを漏らしながら勢いよく階段裏から出て一気に階段を駆け登る。


よし! と、最後の一段に足を掛けたところで、後ろから伸びてきた手に引き摺り下ろされる。


「、」


くそ、一歩遅かったか。


「確保! 確保ぉー!!!」


赤木が今日一番の声を張り上げる。


階段の一番下まで降ろされた私の腕を逃げぬように両サイドから私の倍の身長があるような大きな男に掴まれる。


「まるでNASAに連れて行かれる宇宙人だな」


上の方から声が降ってきた。


掴まれたまま上を見上げれば、幹部室の前で手摺にもたれ掛かりながらこちらを見下ろしている雲居がいた。


その顔は通常通り無表情だけれど、ほんのちょっとこの状況を面白がってる節があるのを見つけ、イラッとする。


「…………っ…………っ!!」


まぁ、今はこの人よりかは幾分かマシだけどさ。


と、死んだ目でサイレントに爆笑してる桔梗を見る。


「桔梗ぉ、息大丈夫ぅ?」


その横で船津が呆れた声で尋ねる。


「……っ……っ」


あ、ダメみたい。桔梗が今度は苦しそうに隣の船津の腕を叩いている。


「はぁ、世話がかかるなぁ……」


なんてボヤきながらも桔梗の背を撫ぜてあげる船津は実は面倒見がいいのかもしれない。



私がここ、“共同倉庫”に出入りするようになって七日が経った。

つまり今日が約束の最後の日だ。


いやぁ、長った。長かったよ。


初日にここの人達をぶっ飛ばしてからというものの、今みたいに隙を見つけては手合わせしてもらおうとムサイ男共に追い掛けられる日々。


桔梗曰く、ここにいる人達は『自分より強い人から学べるものは搾ってでも学びとれ』がモットーなんだそうな。なんて迷惑な標語なんだろうか。


最初の方は仕方ないな~、と付き合ってあげていたんですけどね? 手合わせしてもしてもキリがないんですわ、これが。
で、面倒くさくなって幹部室は雲居たち以外は入れないとのことなのでそこに逃げ込むようにしてたのに、だ。

最終日の今日、ガチで私を捕まえに来た。


いやね、日に日にガチ度が増してるな~、とは思ってたんだけどね?


まさか、本当に捕まえられるとは思わないじゃん~?


「見くびってたな」


私の心の中を透かしたかのようなことを言う雲居に一つ舌打ちをしてあ、と見上げる。



0
  • しおりをはさむ
  • 4
  • 0
/ 61ページ
このページを編集する