病んでるとグレーてる6【完】

海に沈んだ記憶


ふわふわと身体を浮かばせてたのに一気に沈んだ。

腑抜けてると言って志郎は岸へ上がっていくのを横目にしてた時だった。

冷たい水中に沈んで苦しいともがきながらもこのまま海底へ沈んでしまえと思った。

ぶくぶくと空気を吐き出して気泡となる呼吸。

溺れてる、ってこんな感じか?

――溺れたのは誰?

リョウが言ったのを不意に思い出した。

俺は溺れた。
あの夏に波に飲まれて沈んだ。

――海ってしょっぱいね。

頭の中で聞こえる声、どこか懐かしいが声の主が分からない。

俺は口の中にいっぱい広がる塩味に咽る。

吐き出しても吐き出しても塩の味がして苦しい。

ガハガハと吐き出せない空気を必死に腹の底から出そうとしてた時、

グイッと引き上げられた。

「何してんだよ!!」

水面に顔が出て、空気を取り込みながらも海水を吐き出す俺に南雲は焦った顔で平手を打った。

頬にピリピリとした痛みが広がる。

「南雲……」

「ふざけんな!」

「……悪い、溺れた」

痛いくらいに掴まれた手首。
それと同じくらい痛々しい顔で「やめてくれ」と嘆いた南雲。

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