病んでるとグレーてる6【完】

柚真という女


――ドンッ……パチパチパチ。


花火が夜空に大輪の花を咲かせる。

1人になりたいと言って海岸の石段に腰を降ろして一人寂しく花火を見ている俺は頭の中で声がするのを必死に思い出そうとしていた。


――綺麗だね。

誰も隣には居ないはずなのに一緒に見ているような感覚。

俺の横に誰か居たのか?

視線を向けてもそこは空白。

何を忘れている?
俺は誰と花火を見ていた?

「キャー、花火凄いね!」

浴衣の女が夜空を見上げてうっとりする。

その横顔を見て、

「柚真」

何故かその名前を呟いた。


“オマエを助けるって決めた時から中途半端にはしない”

“寂しくて病むだろうが”


ふと、一瞬。
誰かにそう言ってた自分を思い出す。

「寂しい……」

誰か思い出せないせいで寂しいのか、それとも曖昧な記憶に存在する一人の女が現れないから寂しいのか。

――永輝。

だけど、その声でもう一度俺の名前を呼んで欲しいとは思う。

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