病んでるとグレーてる6【完】

貸した男


俺がアニキと出会ったのは朝霧組に入ったばかりの時だった。

「おー新人」

どうしようもない学生時代を過ごした結果がマトモな職に就けないで金融業という裏社会にこの身を沈めた。

「初めまして!真島ケンです!」

一目見た時からこの人がボスだって分かった。

ケラケラとしてるが醸し出す雰囲気は恐れを成すものだった。

俺の他にも新人と呼ばれる新入社員は居たがアニキは俺の顔を見てニヤリと笑った。

「オマエの苗字貸してくれ」

ポン、と肩を叩かれた俺は何を言ってるんだろうと首を傾げる。

「あー俺清隆っつうんだけど次の仕事で苗字が必要なんだわ。そこでオマエの苗字を貸してくれねぇかって聞いてるんだけどよ」

仕事で苗字が必要?
どんな仕事なんだ?

偽名を名乗ればいいのに貸してくれとはスパイか何か?

グルグルと想像を膨らませていく俺に「家族はいるか?」と問う。

「両親は健在で兄が一人居ました」

「居ました?ってことは死んだ?」

「死んだというより、俺が生まれる前に死産だったので何て言えばいいのか分かりません」

「へぇ」

興味なさそうに声を漏らす。
勿論俺も興味がないから怒るとかそういう気持ちは一切ない。

俺が生まれる前、この世に命さえなかった頃の話だ。

見たこともない兄に感情を抱くことはない。世間で言えば俺が長男になってる。

だが両親は死んだ兄、生きてる弟で分けているから自然にそう答えてた。

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