営業一課 ~捕獲包囲網~【完】おまけ小話付き

【13.夢うつつ】




「ラストオーダー入りまーす!」



いつの間にか、会は終盤で。



周りは一気にお開きムードだ。



タクシーを呼ぶ人、家族に迎えの電話をかける人、会費の支払いをする人、一緒に駅まで行こうと話す人。



そんな人たちの声が飛び交う中で、私は一人静かに座っていた。



皆の声が、膜一枚隔(へだ)てているように、遠くに聞こえる。



「――里中!」



呼ばれて、声のした方に顔を向けると、一条課長が私の所に向かって歩いてくるところだった。



「そろそろ帰るぞ」



どういう会話がなされたのか、一条課長が私を送ってくれることになったらしい。



私の目の前に向かって歩いてくる一条課長を見やりながら、さすがに上司にそんなことはさせられない、と僅かに残った理性が言う。



「――ほら、行くぞ」



「だいりょーぶれすよ?ひとりへ帰れまーす」



腕を持とうとしてきた一条課長の手を払って、立ち上がって靴の置いてある場所まで歩く。



すると、まっすぐ歩いているつもりなのにフラフラと左右に曲がった。



思い通りにならない体が、妙に楽しい。


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