事件ファイル「Rは生きたかった」

第一章 /山並み




「ここから観る富士山が、どこから望むより、富士山そのものよ」


理沙は、防波堤のヘリに並んで座る転校生、レイランにその勇姿を指差した。


14歳の春、2人の少女は揃って同じ方向に目を置いていた。


幼子が画用紙に描く形そのものの富士山を観たレイランは、


「あれは、山?」


そんなことを独り言のように呟いた。


「え? 山に見えない?」


頷くレイラン。


「レイランの山って、どんな山?」



レイランは富士山から西へ目を移し、さらに大瀬岬から連なる達磨山方面を指差した・・・


理沙もレイランの指先を追った。







1999年夏。

「斜めに・・・と、この状態はだな、つまりアレだなぁ、酒でも飲んだ勢いってこと?」


川崎警部補という男は、そもそも交通巡査から私服刑事に成り上がった、このような事件か事故か曖昧な状況にある現場には初めて足を踏み入れる素人だった。


真面目だけが取り柄の男である。



「自殺だと考えられる」


同期の安田はマル暴から殺人、自殺など「死」が絡む事件を扱う部署へ配属になったばかりの、やはり素人。


顔つき目つきはヤクザそのもの。
勤務態度も感心しない。


悲劇はそこから傷口が広がった。



「第一ちゃんは誰よ?」



安田は鑑識の南春江に尋ねた。


南は背の高い痩せた女性鑑識で元は警察音楽隊出の美形だが、融通のきかない真面目一徹、キッと安田を睨みつけ、


「第一発見者のことでしょうか?」



そう聞き直した。



「そうだよ、第一ちゃんのことさ、ネェちゃん」


南はうんざりした顔で、



「本署に出向いていただいております」



「あ、そう。会社にね。川崎警部補殿、そう言う状況だそうです」



「やめんか、安田。それで南さん、その人素姓は?」



「T大の同級生だそうです。名前は鷺島 仁さんです」



「えー! T大生なの、この子? なんと勿体ねぇ。この美貌でよぉ。親は悲しむわな。いくつよ? この子」



南は安田を横目に



「T大理学部ですが、第一発見者の同級生より5歳ほど年長であるとのことです」



川崎に対し端的に報告のみをした。

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