貧乏少女

ある男の性質






「嬢ちゃん、俺はヤクザだ。」

少し後ろを歩くあたしに、哲太さんは足を止めて横に来いと顎を動かした。

すぐに横に行くと、歩みを再開させる。



「………はい」


「ヤクザってのに、本当にいい奴なんかいねぇ。だからって情がねぇ訳じゃねぇ」


隣を歩く哲太さんは、たまに顔を合わせていた、勿論取り立てでだ。


確かに見た目は怖いし、声も低いけどあたしやお父さんに乱暴した事はなかった。


「嬢ちゃんは、これから若に飼われる事になる。いいか死にたくなきゃ若の言う事は破るな、若を優しいなんて勘違いするなよ」


「あの……飼われるって事はあたしは体を売らなくていいんですか?」


あたしの問いかけに、哲太さんは険しい顔をした。



「他の奴にはな、だが若には全部を売った事になる。俺も含め嬢ちゃん、絶対に優しいとか頼れるとか勘違いするんじゃねぇぞ。ここにいる奴等は平気で女も餓鬼も大人も男も使えるものなら、何でも使う。慣れなくても慣れろ。それが、嬢ちゃんが少しでも生きてられる理由だ」



あたしは、まだこの時哲太さんの言葉の意味が良く理解出来てなかった。

これから先待ち受ける地獄をあたしは、知らなかった。


彼の事も何も知らなかった。そう何も知らない関係から突然始まったんだ。




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