狼の花園〈完〉【修正版】
大変な一日 /序章
(…冷静になれ、姫野 花音!
頭の中を整理するのよ!
どうして こうなったのか…!)
すっかり夜も更けた頃、
畳の香りがする八畳の和室で、
一人の少女が目を丸くしていた。
(今朝まで、私は普通の女子高生だったはず!
それが どうして…!?)
行灯(あんどん)の灯りが、ぼんやりと花音を照らす。
その姿は、純白の着物に身を包んだ婚礼初夜のお姫様。
(どうして こんな形でファーストキスを奪われなくちゃいけないの!?
それも…っ!)
動揺する花音の視線の先で、男が一人、困ったように笑っていた。
この人物が、花音の初キスの相手なのだが、
この男は花音の婚礼相手ではない。
そもそも、『男』と、呼んで良いのか迷うところだ。
その男は、白粉を塗った白い肌に、真っ赤な紅を引いた唇で、
きらびやかな赤紫色の打ち掛けを羽織り、尼のような頭巾を頭に被っている。
頭巾の下から僅かに覗くのは、
月代(さかやき)を剃った、ちょんまげ頭。
そんな人物が片膝を立てて座り、花音を見つめている。
花音は涙目になりながら、心の中で叫んだ。
(それもっ、こんなオカマさんにーーーっっ!!)
あらすじ
女子高生が江戸時代で、女嫌いの殿様と、なぜか側室として住む5人の女装男子と共同生活!?
そこに生きる愛する人々と、現代の家族、友人。間で揺れる彼女が選ぶのは…?
この作品のレビュー
総合ランキング33位獲得!(2013年05月)
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