狼の花園〈完〉【修正版】

偽者の日々 /変化と安らぎ



その日の夕方。

城の外に出たことを殿に知られた花音は、
隠し通すことを諦めて、正直に午前中の出来事を全て話し、鈴蘭に髪を切ってもらうことにした。

鈴蘭の部屋で、花音は鏡を前に座る。

焼けてチリチリになっていた部分を切ると、肩に少し掛かるくらいの長さになった。


「これだと結い上げるのは難しい…か。」


花音の髪を手でまとめて軽く持ち上げてみた鈴蘭が、そう呟き、悩む。

頭の軽くなった花音は、黙って鈴蘭の言葉を待った。


(…やっぱり、結い上げるのが普通なのかな?

そういえば江戸時代を舞台にした時代劇って、皆 髪を結ってるイメージあるもんね。)


すると鈴蘭は髪から手を離し、少し下がって花音を見る。
それから一言。


「…このままでいいか。可愛いし。」


「え…!?」


面と向かって『可愛い』と言われて、花音は頬を紅潮させた。
そんな反応を見て、鈴蘭は微笑む。


「町に出たら目立っちゃうけど、城の中にいる分には問題無いものね。」


「………。」


花音は思わず黙り込んでしまった。


(ますます城の外に出にくくなってるんですけど…!)


正座をし、背中を丸めた花音は縮こまる。
鈴蘭は口元を袖で隠してクスクス笑う。


「そうやっていると、怒られて反省している童(わらべ)みたいね。

一緒に湯殿に行く?背中流してあげましょうか?」


「けっ!結構ですっっ!!」


花音は顔を真っ赤にして、飛び退いた。


「あら、遠慮しなくてもいいのに。」


愉しそうに笑う鈴蘭を部屋に残し、


「ありがとうございました!失礼します!!」


花音は大慌てで自分の部屋に戻る。
鈴蘭は、ひとり呟いた。


「ふふふ、面白い子…。」

 

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