狼の花園〈完〉【修正版】

姫の居場所 /喪失



「こうしてみると、まるで少年のようですね。」


霞は花音の姿を見て そう呟く。

花音はサラシを巻いて、縞模様のついた藍色の、男物の着物を着ている。

頭の高い位置で髪を結い、花音は鏡を確認。
その姿を見て声を上げる。


「確かに男の子みたいです!
…私がこんな姿で診療所に行って、驚かれませんか?」


すると霞は微笑んだ。


「大丈夫ですよ。
姫様が行く診療所は殿とも顔馴染みで、奥座敷の事も知っていますから。

口が堅くて信頼できる診療所です。」


「そうだったんですか。」


(それで殿様は、私が診療所に行かなきゃいけない事を知ってたのね!)


納得した花音に、霞が軽く頭を下げる。


「鈴蘭さんを呼んできます。姫様は ここで待っていてください。」


「分かりました。」


花音の返事を聞き、霞は部屋を出た。

鈴蘭の部屋は襖が開いていたので、覗いてみたが鈴蘭の姿は無い。


(殿のお部屋でしょうか?)


そう思って奥居間に向かうと、部屋から竜胆の声がした。


「じゃあ、わざと一人で歩かせろって言うのか!?」


竜胆の声には、苛立ちと不満が込もっている。


「…!」


不審に思った霞は、気配を消して部屋に忍び寄り、聞き耳を立てた。


「未だに正体の分からぬ娘だ。わざと泳がせてみれば、何か分かるかもしれない。」


殿がそう言うと、鈴蘭がそれに続く。


「あの子がこの城に来て少し経った頃から、城下町に浪人が増えたと聞くわ。

何か関わりがあるのかもしれない。」


その言葉を聞いた竜胆は、低い声で尋ねる。


「…もし…関わりがあったら、どうすんだよ?」


その問いに、殿はハッキリと答えた。


「この藩に災いをもたらすのなら、いかなる者も排除する。
あの娘も浪人も、例外ではない。」


「…!!」


ハッとした霞は、音を立てないように その場から立ち去る。

そのまま慌てて花音の部屋に飛び込むと、花音に驚かれた。


「霞さん!?どうしたんですか…!?」


「姫様…!」


血相を変えた霞は、花音の両肩に手を置く。


「今日、町に行くのは止めてください…!」


「え?」

 

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