狼の花園〈完〉【修正版】



「町に行ったら、貴女の命が危ないんです!」


切羽詰まった様子の霞に言われ、花音は戸惑う。


「あの…落ち着いて下さい!言ってる意味が分かりません。
どうして私の命が危ないんですか?」


そう尋ねる花音に見つめられ、霞は一瞬迷ったが、意を決して口を開いた。


「…この奥座敷に居る者は皆、
貴女が、お夏様と入れ替わって この城に来たという事を知っています。」


「…え…?」


霞の言葉に、花音の頭は真っ白になった。
まるで鈍器で殴られたかのような衝撃を受け、言葉を無くす。


(知ってるって、どういう事!?いつから?ずっと知ってて黙ってたって事…?)


訳の分からない花音は、呟く。


「でも、私…診療所に…行かなきゃ…。」


そんな花音に霞が言う。


「殿や鈴蘭さんは、貴女がこの藩を脅かす存在だと疑っています。

貴女をわざと一人で行動させ、竜胆に それを見張らせるつもりでしょう。」


「待って!藩を脅かすって…?
私、ずっと疑われてたって事ですか…?

いや…そもそもどうして、今、急にそんな事を言うんですか?」


混乱して、困った表情を浮かべる花音。

霞は暫く目を閉じて考えると、
目を開け、花音の右手を自分の両手で包むように持った。

それから花音を見据えて言う。


「私は…貴女を慕っております。」


「…え…?」


「だから貴女を助けたい。貴女の力になりたい。

…それが理由では、いけませんか?」


突然の告白に、花音は返す言葉が見つからなかった。


「と、突然…そんな事…言われても…。」


顔を赤くした花音は巾着を握り締めて俯く。
霞は少し声を小さくして言った。


「驚かせて申し訳ありません。どうしても…私は貴女を助けたいのです。

貴女が奥座敷に来た目的は存じませんが、殿に疑われている間は町に出ず、大人しくしていて下さい。

必要ならば、領地の外に逃げる手助けだって…!」


「…っ!」


そこまで聞いて、花音は立ち上がる。
下唇を噛み、その瞳は潤んでいた。


「…霞さんも、私の事を疑ってるんですね…。」


「え…?」


霞が首を傾げると、花音は悲しげに言った。

 

0
  • しおりをはさむ
  • 1781
  • 1490
/ 772ページ
このページを編集する