狼の花園〈完〉【修正版】

姫の居場所 /侵入者



花音と清白が話をした翌日の事。


「はぁ…。」


昼下がりの城下町で、竜胆は大きな溜め息をついていた。


(…姫は相変わらず寝れてねぇって霞が言ってた。

最近になって、姫が いつもより白粉を厚く塗るようになったのは、顔色が悪いのを心配されねぇようになんじゃねぇかとも言ってたし…。

やっぱり…あのときの事が心の傷になってんだよな…。

俺が あんな事聞かなければ…)


「…はぁ…。」


蕎麦屋の店先に座る竜胆の口から溢れ出るのは、溜め息ばかり。
その心の中は、後悔ばかりだった。


(そもそも俺が あのとき見失わなければ、姫は あんな目に遭わなくて済んだはずだ…。

霞は、姫を幸せにするのは、自分でなくても構わないって言ってたけど、
俺が原因なんだから、俺がなんとかしたい!

犯人を捕まえる事とは別に、姫が笑顔になるような事を…!

…でも…何をしたら良いのか、分かんねぇんだよな…。)


「…はぁー…」


そんな竜胆に、


「…竜さぁ~ん、うちの蕎麦屋の前で溜め息ばっかりつくの止めろよな。
お客さん減っちゃうだろ~。」


口を尖らせた彦六が言った。その隣には平太もいる。


「あぁ、お前らか。手習所はどうした?ずる休みか?」


竜胆がそう尋ねると、彦六が言い返した。


「ちげぇよ!今日は、もう終わったんだって!」


「今日は、仁兵衛様が先生の日だったから、分かりやすくて楽しかったんだよ!

竜さんは何してんの~?」


ニコニコ顔の平太に聞かれ、竜胆は唸る。


「う~ん……ちょっと困ってたところだ。姫の事でな。」


それを聞き、平太の表情が曇った。


「姫お姉ちゃん、怖い目に遭って、元気無いって言ってたよね。」


竜胆は この二人に、そう説明していた。

危害が及ぶ可能性があるので、詳しく話す事は出来なかったし、
そもそも子供に話すような事ではない。

竜胆が平太に向かって頷くと、彦六が手を叩いて言う。


「うちの蕎麦食べたら、きっと すぐ元気になるって!

竜さん!姫お姉ちゃんを連れてきてよ!」


花音の事を竜胆が姫と呼んでいたので、
いつの間にか、二人も姫と呼ぶようになっていた。

竜胆は溜め息をついて答える。

 

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